マグネシウム蓄電池向け正極材を新開発、室温で200回以上の充放電に成功蓄電・発電機器

東北大学の研究グループと物質・材料研究機構(NIMS)が、マグネシウム蓄電池向けた酸化物正極材料を開発。これを用いて試作した電池で、室温環境下で200回以上の繰り返し充放電ができることを確認したという。

» 2025年09月22日 15時00分 公開
[スマートジャパン]

 東北大学 金属材料研究所と物質・材料研究機構(NIMS)は2025年9月17日、原子配列中に隙間を多く含む非晶質の酸化物正極材料を新たに開発したと発表した。また、この正極を用いたマグネシウム蓄電池で、室温における200回以上繰り返し充放電を世界で初めて実証したという。

 資源として豊富なマグネシウム(Mg)を用いるマグネシウム蓄電池は、レアメタルであるリチウムを使用するリチウムイオン電池を補完・代替しうる次世代蓄電池として期待されている。一方、その実用化に向けては、繰り返しMgイオンを貯蔵・放出できる正極材料の開発が必須となる。中でも特に、高電位により大量のエネルギーを蓄えられる酸化物材料は有望な候補だが、Mgイオンの移動が遅いため、室温での使用が困難だった。さらに、繰り返しの充放電による電極の劣化を抑制し、長寿命化する必要もあった。

Mg蓄電池の作動原理を示す模式図 出典:東北大学

 そこで研究グループは、独自に見出したイオン交換反応によるカチオン空孔導入と微細粒子合成法により、室温でもMgイオンを挿入・脱離できる新規酸化物正極材料を開発した。イオン交換反応では、材料中にもともと含まれていた一価カチオンを二価のMgイオンに置き換えることで、電荷のバランスを保つために「カチオン空孔」が生じる。この仕組みを利用して、Mgイオンの通り道となるすき間として、カチオン空孔を大量に導入した。さらに、合成方法として溶液燃焼法と固相反応法を組み合わせることで、直径10nm以下の微細な粒子を合成し、Mgイオンが粒子の表面と内部の間を速やかに移動できるようにした。

 この正極材料と、近年開発された高性能電解液、Mg金属負極を組み合わせて蓄電池を試作したところ、酸化物正極材料ならではの高い電圧をもつマグネシウム蓄電池の作動に成功。実際に、作動に2.5V以上が必要な青色発光ダイオードを点灯できることも確認し、その高電圧特性を確認したとしている。

 またサイクル特性も良好で、充放電を200回以上繰り返しても最大容量の75%を維持し、これまでに同様の条件で作動した電池と比べて8倍以上長いサイクル寿命を達成したという。

  研究グループは今後、「電圧の安定化」や「クーロン効率の向上」といった課題を解決するため、関連する分野の専門家と協力しながら、早期実用化を目指すことにしている。

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