排出枠取引市場の基本設計 制度対象者以外の参加は「必要最小限」の方針に第8回「排出量取引制度小委員会」(3/4 ページ)

» 2026年09月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

類型2:取り引きの円滑化に寄与する市場参加者の要件

 排出量取引制度において対象事業者は、毎年度の排出実績と同量の排出枠を翌年度の1月31日に保有することが義務付けられている。よって対象事業者にとって、排出枠の取り引きとは、排出枠の過不足を調整(余剰時の売却・不足時の購入)することを目的として行うものである。

 なお本制度において、排出枠余剰分は翌年度に持ち越し(バンキング)が可能であり、余剰時の売却は必須ではないため、市場参加者が「不足時の購入」のみに取り引きを行う場合、市場の流動性が低いままとなり、取り引きが一方向に偏る(買い争いが生じる)ことが懸念される。

 また、制度対象者による排出枠の取り引きは、排出枠の過不足が明らかとなった時点から保有義務期限までの間に集中する可能性が高く、それ以外の時期には取引量が少ないことが予想される。取引量が少ない(市場流動性が低い)ことは、少量の取り引きにも市場が大きく反応する原因となり、価格変動が大きくなるおそれがある。

 制度対象者とは異なる考え方/インセンティブを持つ主体が市場に参加することにより、排出枠の売却/購入の両方のニーズに機動的に対応し、売買需要の時期的なミスマッチが緩和され、取り引きの円滑化が進むと期待される。

 このような取引円滑化に寄与する事業者の能力・体制などについては、GX-ETS第1フェーズで活用されてきた東京証券取引所の「カーボン・クレジット市場」において具体的な要件が定められていることから、排出量取引制度(GX-ETS第2フェーズ)の排出枠取引市場においてもこれを参考とすることとした。

 また、排出枠取引分野の実績を確認する観点から、カーボン・クレジット市場における取引実績などを確認する。

図5.類型2の参加者に求められる能力と要件 出典:排出量取引制度小委員会

 具体的には、売買双方の需要に同時に対応し得る能力を確認する観点から、売り買い双方の気配提示実績を「要件①」とする。

 カーボン・クレジット市場では、取り引きの流動性を高めるため、「マーケットメイカー制度」を導入済みであり、マーケットメイカーは、あらかじめ定められた時間帯に一定の基準の下で売り買い注文を同時に出す「気配提示」義務を負っている。気配提示の継続性の要件としては、エネルギー価格や他市場動向などを踏まえた価格形成が行われる午後立会時間の「50%」という閾値が使用されている。

 よって、排出枠取引市場の要件としては、カーボン・クレジット市場において前年度に、午後立会の約定時刻まで売り買い双方の気配提示を同時に実施した日数が、年間営業日数の「50%以上」であることを要件とする。

表1.カーボン・クレジット市場 マーケットメイカー制度の条件 出典:排出量取引制度小委員会

 取り引きの円滑化に寄与する事業者の取引数量に係る「要件②」としては、カーボン・クレジット市場における直近2年度の年間取引数量が、各年度において取引実績を有する事業者の平均的な実績以上であることとする。市場参加資格の最初の確認が2027年度となるため、実績を参照する期間は、2025年度・2026年度となる。

表2.カーボン・クレジット市場における直近年度の取引状況 出典:排出量取引制度小委員会

 また、カーボン・クレジット市場のマーケットメイカーは、金融商品取引法または商品先物取引法に基づく取引所が開設する市場の取引資格を有することを要件としているため、排出枠取引市場においても同様の要件を求めることとする。

なおGX推進法では、制度対象者以外で法人などが保有口座を開設できるのは国内に本店などを持つ内国法人に限られている。よって、市場参加者は内国法人に限られる。

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