映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。
洋画の好調とは対照的に、邦画は興収50億円を超える作品が1本もなかった(2011年12月末現在)という、明暗くっきり分かれた2011年の映画業界。では、2012年度はどのような1年になるだろうか。注目作を紹介しつつ、その動向を探ってみた。
まず、1つめのキーワードが“アメコミ”である。あれっ? 毎年アメコミものは公開されているじゃないか、と思うかもしれない。だが、今年がいつもと違うのは、どの作品もヒットの期待大。そう、アメコミ作品の当たり年なのだ。
では、どういった作品が揃っているかというと、アイアンマン、ハルク、マイティ・ソー、キャプテン・アメリカの4大ヒーローが集結した「アベンジャーズ」(8月公開予定)、クリストファー・ノーラン版バットマン・サーガの完結編「ダークナイト ライジング」(夏公開予定)、新シリーズとしてスタートする「アメイジング・スパイダーマン」(6月30日公開予定)と、興収100億円超えは厳しいかもしれないが、50億円はいけるポテンシャルを持っている。となれば、事前にどれだけ人々を煽れるか、宣伝にかかってくる部分も大きいだろう。
次のキーワードが“ソニー・ピクチャーズ(以下ソニー)”である。というのも、今年のソニーのラインアップが相当に強力? 前述の「アメイジング・スパイダーマン」のほか、シリーズ第23弾「007 スカイフォール」(12月1日公開予定)、ハリウッド版「ドラゴン・タトゥーの女」(2月10日公開予定)、「トータル・リコール」(夏公開予定)といった具合だ。
そして、昨年で「ハリー・ポッター」シリーズが完結し、ファンタジー映画は衰退するかと思いきや、主要キャストが続投する「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの前日譚「ホビット 思いがけない冒険」(12月14日公開予定)、6月公開予定の「スノーホワイト」「ヘンゼル&グレーテル」などが控え、ファンタジー映画が俄然盛り上がりそうな気配だ。
一方の邦画については、関係者に聞いてみた。
「ドラマや小説・コミックの映画化、ヒット作の続編と、これまでと大差ない作品が占めているなか、ワーナーが手がける『ベルセルク』シリーズや『るろうに剣心』、ソニーの『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』(2月4日公開予定)、『桜蘭高校ホスト部』(3月17日公開予定)、20世紀フォックスの『カラスの親指』(秋公開予定)など、洋画メジャーのローカル・プロダクション作品が目立ちます。正直なところ、これまではさほど気にかける存在ではありませんでしたが、今年はいい意味でライバルであり、盛り上がるタイトルが揃っていると思います。うかうかしていられないですね」
また、別の関係者は「劇場のシステムが整ったため、これまで以上に3D映画が増えるでしょう。本当に必要か? と思うものも3Dになってくるはず」と口にする。
上記を踏まえると、今年も洋画のほうが優位な状況となりそうだ。ただ、邦画のタイトルは近々で発表されることが多いため、十分逆転も可能。とはいえ、洋邦ともに盛り上がるのが一番であり、2011年を超えられるラインアップが揃った2012年といえよう。
1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。
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