市場規模は150億円超、「けいおん!」はなぜここまでヒットしたのか?映画ウラ事情

» 2011年12月26日 12時24分 公開
[安保有希子,ハリウッドチャンネル]
クランクイン!

「映画ウラ事情」とは:

映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。


 市場規模は150億円超。「けいおん!」はなぜここまでヒットしたのか?

 12月3日に公開された『映画 けいおん!』。公開7カ月前に発売された前売り券第1弾4万枚は3日間で完売し、11月27日にユニバーサル・スタジオ・ジャパンで行われた映画公開直前イベントの5000枚のチケットはわずか5分で完売と、盛り上がりを見せた。

ハリウッドチャンネル 社会現象を巻き起こしている「けいおん!」 (C)かきふらい・芳文社/桜高軽音部

 そもそも、この「けいおん!」、2007年に連載が開始した4コマ漫画が、2009年4月にTBS系でアニメ化されたことがブームのきっかけ。まず注目を集めたのが主題歌と劇中歌だ。劇中のバンド名“放課後ティータイム”名義でリリースされたミニアルバムはオリコン週間チャート1位を獲得、キャラクターたちが使っていると想定される実在の楽器や文房具なども売上を伸ばし、第1期のアニメ終了時には、関連商品の点数は200点以上にも。

 さらに、当初、続編の予定はなかったが、2009年12月に第2期の制作が発表され、2010年4月から9月までTBS系列全局放送。気付けば、アニメグッズ、タイアップ商品、フィギュア、お菓子、飲料、楽器、ラッピング電車などなど、商品化アイテムは1050点以上、約150億円の市場規模にまで成長していたのだ。

 深夜アニメがヒットしてブームになる場合、大抵は“オタク”が支えているのだが、「けいおん!」に関しては、物語同様、高校の軽音楽部への入部希望者が殺到するなど、女子高生もブームの一端を担った。なぜ、「けいおん!」はここまでヒットしたのだろうか。業界関係者はこう答える。

「女子高生が主人公になると、“萌え”の要素を入れたり、ウエストがくびれた巨乳といった抜群のプロポーションを誇るなど、オタク層を意識することが多い。ですが、『けいおん!』の場合は、そういった要素を排除し、女子高生のありふれた日常を描いていった。とはいえ、リアルすぎる日常ではなく、ある程度のファンタジー的要素も入っている。そこが共感を呼び、ファン層が広がったのだと思います」

 さらに、こうも話す。

「マーチャンダイジングも上手かったと思います。既存のアニメの場合、高額フィギュアやオリジナルデジタルグッズなど、男性を意識したものが多かった。でも、『けいおん!』の場合は、低価格帯の商品が多く、コンビニでもたやすく手に取ることができる。そういった商品展開もファン層を広げる要因になったと思います」

 とにかくブームの「けいおん!」だが、業界関係者には冷静な意見も多い。

「やはり、同作のファンはアニメファンですから、そこからアニメ映画に来るかというとそうではない。それゆえ、同じような展開をしたくてもできないし、地道にやっていくしかない。ある意味、お祭り的な存在でしょうか」

 とはいえ、盛り上がらないよりは盛り上がったほうがいいのだから、とことん盛り上がってほしい。

映画ライター:安保有希子

1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。


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