映画監督が映画を撮らない=無収入? 撮らない間はどうやって生活しているのか映画ウラ事情

» 2012年02月22日 15時20分 公開
[安保有希子,ハリウッドチャンネル]
クランクイン!

「映画ウラ事情」とは:

映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。


 2010年1月17日に石井聰亙から石井岳龍に改名した映画監督の最新作『生きてるものはいないのか』が、2月18日から公開となる。しかもその作品は、石井監督にとってなんと10年ぶりの長編新作なのだ。

ハリウッドチャンネル 『生きてるものはいないのか』(C)DRAGON MOUNTAIN LLC.

 このように10年と聞くと、どうにも驚かされてしまうのだが、1979年の『太陽を盗んだ男』以降、作品を撮っていない長谷川和彦監督、死亡説まで飛び交っていた『博多っ子純情』の曽根中生監督といったさらなる上がいるように、実は映画業界において、数年のブランクはそれほど珍しくも、驚くべきことでもないのである。

 だが、その間、どうやって生活しているのだろうか。映画監督が映画を撮らない=無収入だと思うのだが……。

 その疑問を解決すべく、『生きてるものはいないのか』の宣伝担当に話を聞いた。「劇場長編作は10年ぶりとなる石井監督ですが、その10年間、何もしていなかったわけではなく、テレビドラマや短編などを撮っていました。さらに、神戸芸術工科大学の教授をしており、そこが活動のメインの場所となっているそうです。例えば、今作では大学の機材を使ったり、敷地内で撮影したり。また、同校の生徒もオーディションを受け、キャストとして2人が参加しています」

 そして、こう付け加える。

「石井監督は映画製作事務所も立ち上げ、意欲的に映画を製作していくとのこと。今より短いスパンで新作をお見せできることと思います。名前を改名されたのも、そういった気持ちの表れとのことです」

 石井監督は長編こそ撮っていなかったものの、映像関係の仕事に従事し、10年間を過ごしていたことは分かった。では、ほかの“久しぶり”監督はどうなのだろうか。自身で資金を集め、年に作品を何本も発表する監督は、こう話してくれた。

「普通であれば、仕事をしていないんだから生活はできないですよね。でも、そういう監督の大半が、自分の実家が金持ちだったり、パートナーが養ってくれていたりと、まぁ、のほほんとしていることが多いですよね。要はヒモなんだけど(笑)。ただ、あまり久しぶりになってしまうと、業界自体からお呼びがかからなくなってしまう。“●●監督、何十年ぶりの新作!!”とキャッチコピーをつけたところで、よほどの映画ファンでない限り、誰それ状態ですよ。だったら使いませんよね。また、今の技術進歩は早いですから、何十年も前に止まっている人がついていけるはずがない。CGやVFX、3Dなど、まったく分からないと思いますよ」

 手厳しい部分もあるが、それが現状というものだろう。そう考えると、映像に携わりつつ10年ぶりくらいが、いろんな意味で限度なのかもしれない。

映画ライター:安保有希子

1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。


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