はやぶさ映画のトリを務める『おかえり、はやぶさ』。ほか2作とどこが違う?映画ウラ事情

» 2012年03月14日 08時00分 公開
[安保有希子,ハリウッドチャンネル]
クランクイン!

「映画ウラ事情」とは:

映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。


 2011年夏、小惑星探査機はやぶさを題材にした映画が、同年秋から2012年にかけて3本公開されることが話題となった。まず先陣を切ったのが20世紀フォックス映画制作の『はやぶさ/HAYABUA』(DVD&ブルーレイが3月7日発売)、次が東映制作の『はやぶさ 遙かなる帰還』(現在公開中)、そして最後が松竹制作で3月10日公開の『おかえり、はやぶさ』である。フォックス版はやぶさのソフトが発売されることにより、奇しくも3作同時期に揃うこととなったのだ。

ハリウッドチャンネル 「おかえり、はやぶさ」(C)2012「おかえり、はやぶさ」製作委員会

 では、題材が同じであるがゆえ、他社作をどのように捉え、差別化を図っていったのか。トリを務める『おかえり、はやぶさ』の宣伝プロデューサーにさまざまな話を聞いた。

「そもそもはやぶさに惹かれたのは、はやぶさの帰還の映像を見たのがきっかけです。そして、この話を大人だけのものではなく、子供にも分かりやすいように伝えたいと、映画化を考えました。ただ、3社が映画化することが分かった時点で、さすがに『それでも作って良いか』を社内で確認しました。当然NGになると思っていたのですが、『むしろ作れ』とGOサインをもらい、驚きながらも勇気をもって作りました」

 中心に据える人物で物語がガラリと変わるとはいえ、同じ題材での差別化は難しくなかっただろうか。

「一番の違いは、『ほか2作は人間の凄さやドラマを描く』というコンセプトで、はやぶさ自体の描写はなくても良いというスタンスで作られていましたが、弊社のものは、『宇宙空間を飛ぶはやぶさを見せたい』という中学生のような思いで作っているところです。さすがに前2作の評判や興収は気になりましたが、当初から狙っているターゲットが違うので、現時点ではあまり気にしてないです」

 具体的に前2作と『おかえり、はやぶさ』、どういった点が違うのだろうか。

「まずキャスティングに関しては、本来のはやぶさの話が『実在するJAXA(宇宙航空研究開発機構)中心人物の話』のため、必然的に年配の方々が中心となってしまうのですが、『おかえり、はやぶさ』では、できるだけこれからの日本を担う若い人々を中心に据えた話にしました。また、クローズアップされがちな『はやぶさ』の偉業だけではなく、その前の『火星探査機のぞみ』や、後継機『イカロス』のエピソードも盛り込むことで、脈々と連なる日本の宇宙開発史を描いた点も違うところでしょうか。これはJAXAの方が非常に喜んでくれました」

 そして、忘れてはならないのが、『おかえり、はやぶさ』だけが3D映画であるという点。これは、宇宙の広大なスケールを味わうには最適だといえよう。最後のはやぶさ、ぜひファミリーで楽しんでほしい。

映画ライター:安保有希子

1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。


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