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» 2014年06月13日 10時00分 公開

パイロット不足で国内LCCが大量欠航――その背景にあるものは?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)

[秋本俊二,Business Media 誠]
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身体検査に通らない機長は地上勤務に

 エアラインパイロットには毎年、ライセンス更新のための身体検査が控えている。健康管理もパイロットには大事な仕事で、検査日が近づくと肝機能を示すGTPに不安のある人は数カ月前から好物のビールを控え、肥満傾向にある人はプロボクサー並みに汗を流して減量に努めなければならない。検査では病気の有無だけでなく、視力や平衡感覚なども厳しくチェックされる。万が一検査に通らなければ、フライトは即刻停止。地上の仕事をしながら、翌年の検査日がくるまで指折り数え、空を見上げて「飛びたい、飛びたい」と呟きながら過ごすことになる。

飛行機と空と旅 国内LCCが3社とも運航しているエアバスA320のコクピット(出典:エアバス)

 LCCの中には大手を退職した高齢のパイロットを採用してスタートしている会社も多く、ピーチが発表した「病欠者」の中にはその身体検査に通らなかった高齢者が含まれているのではないかと私は想像する。

 またバニラエアは、6月の154便の欠航理由の1つに「パイロット数名の予期せぬ退職」と挙げた。日本のLCCマーケットはまだまだ開拓の余地ありと狙いを定める外国勢も多く、例えば2014年8月からは中国のLCC春秋航空の傘下にある春秋航空日本が成田から広島、高松、佐賀の3都市へ就航の予定している。一度は撤退したエアアジア・ジャパンも2015年の再上陸を狙い、準備を進めているようだ。そうしたLCC同士の人材引き抜き合戦が、すでに水面下で始まっているのかもしれない。

 病欠者の続出と退職者の増加で、国内LCCでは機長が不足し、計画していた便を飛ばせなくなる。その結果がピーチやバニラエアの大量欠航であり、LCCの体質と実情を考えれば決して驚くような出来事ではない。

著者プロフィール:秋本俊二

著者近影 著者近影(米国シアトル・ボーイング社にて)

 作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。

 著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。

 Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。


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