Webサービスによる金融機関システムのオンライン接続:ITソリューションフロンティア:システム
Webサービスは、インターネット上に広く公開され提供されているアプリケーションを、インターネットの標準的な手順を用いて利用する技術で、B2Bシステムで利用されることが多い。本稿では、この比較的新しい技術であるWebサービスを、金融機関向け業務系パッケージシステムのオンライン接続に利用した事例について紹介する。
投信窓販の拡大と新たなニーズの高まり
1998年に投資信託の窓口販売が解禁されて以来、銀行における投信の販売実績は順調な伸びを示している。また、野村総合研究所(NRI)が解禁当初から提供している投信口座管理パッケージシステム「BESTWAY/AM」も、幅広い金融機関で利用されている。
これまでBESTWAY/AMは、勘定系システムと切り離されて利用されていたが、投信販売業務が銀行における主要業務になるにつれ、オンライン接続によるデータの二重入力の回避や、顧客情報の一元管理など、新たなニーズが高まってきている。
仕様変更に対するシステム対応
近年、政府は間接金融から直接金融へのシフトを進める「証券市場の構造改革」を推進しており、毎年のように大きな制度改正が行われている。
業務パッケージシステムを利用すると、このような制度変更に低コストで対応できるが、システムをオンライン接続すると、システム間の結合度が高まるため、一方の仕様変更が他方に与える影響も大きくなる。そこでBESTWAY/AMでは、制度変更などにともなう仕様変更の影響を極力抑えつつ、オンライン接続のメリットを享受するため、Webサービスを利用したオンライン接続機能を提供することにした。
Webサービスのメリット
複数のシステムをオンライン接続する場合、これまでは通信手順から接続仕様を決定し、全データ項目を入力する必要があった。しかし、Webサービスを利用すると、インターネットで使用されている通信手順を用いて、標準化された仕様に基づいて必要なデータ項目のみを入力するだけでオンライン接続が可能になる。
Webサービスは次の基本仕様に基づいて構成されている。
(1)SOAP(シンプルなオブジェクト呼び出し手順)
接続データ構造を規定した規約。この規約に従った電文をSOAP電文と呼ぶ。
(2)WSDL(Webサービス記述言語)
Webサービスの名称と場所、および呼び出し方法などを記述したインタフェース仕様書。
この基本仕様をサポートするさまざまな基盤ソフトウェアを利用することができるため、Webサービスのシステム構築は比較的容易である。
Webサービスの接続データは、XML(拡張可能なマークアップ言語)形式である。XMLは、HTML(ハイパーテキストマークアップ言語)と同様にデータを記述するマークアップ言語データであるが、HTMLがブラウザに表示するための情報をあわせもっているのに対し、XMLは論理的な情報を記述するための言語であり、必要な情報を抽出することが容易である。
基盤ソフトウェアの一部として提供されるツールにより、「(1)データ項目への値の代入、(2)SOAP電文の送受信、(3)データ項目からの値の取得」などの処理を行うソースコードをWSDLから自動生成させることができる。
したがって、Webサービスの利用システムは、(1)〜(3)の処理を呼び出すだけでオンライン接続することが可能になる。さらに、SOAP電文はオブジェクトとして扱うことができるため、必要な項目のみにデータ値を代入・取得するだけでよい。これはインタフェース仕様の変更によりWSDLが更新された場合でも、使用項目の変更でなければ呼び出し側のプログラムは変更不要であることを意味する。
このように、Webサービスによってオンライン接続されたシステムは、ゆるやかな結合状態(「疎結合」と呼ばれる)となり、接続された他システムの仕様変更の影響を受けにくくなる。
Webサービスの問題点とBESTWAY/AM
以上に述べたように、Webサービスを利用すると比較的簡単にオンライン接続が可能で、仕様変更にも容易に対応できる。しかしWebサービスは発展途上の技術であり、いくつかの問題がある。そこでBESTWAY/AMでは次のような対応を行っている。
(1)セキュリティの確保
接続相手の認証やメッセージの暗号化・改ざん防止に関する規定がないが、接続相手が特定できるため、接続ネットワーク環境のセキュリティレベルに合わせたセキュリティ手段を用いている。
(2)トランザクション管理
Webサービスのような疎結合システムでは、OLTP(オンライントランザクション処理)のような密結合システムのトランザクション管理ができない。そこで、処理結果を後からでも照会できる仕組みを用意している。
現在、標準化団体などで、これらの課題を解決するための仕様が策定されている。このような標準仕様が確立されれば、より幅広いビジネスで、Webサービスの利用が進むものと考えられる。
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