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出口の見えない「上り拡張ADSL」の取り扱い(3/3 ページ)

» 2004年06月18日 15時35分 公開
[佐藤晃洋,ITmedia]
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 単純に頭数だけで言えば、イーアクセス陣営には既にNTT3社(持株&東西)やTOKAI(ビック東海含む)、Centillium、Broadcom、NEC、住友電工といった会社が賛意を示しており、SBB陣営と見られるアッカ・ネットワークス、Conexantらに比べると、現時点では数では有利だ。

 しかしまだ態度を明確にしていない企業も多数存在している。今後の多数派工作の結果次第の部分もあるが、どちらも2/3以上の賛成を獲得できない可能性は十分に存在する。そうなると議論は再び振り出しに戻り、EU方式を含めた新規DSL方式の導入が全面的にストップする異常事態がなおも続くことになる。

 この点については、同会合の席上でもNTT東日本の成宮憲一技術部長が「もし表決でも結論が出なかった場合にどうするのか、(参加者の)皆さんはよく考えて欲しい」とコメントし警鐘を鳴らしていたが、一方でJANISの平宮康弘氏からは「結論が出なければ11月30日まで議論を続けるまで」と、半ば開き直りとも取れる発言も聞かれた。

とにかく早期に何らかの結論を

 というわけで、この期に及んでなおもDSL事業者間では綱引きが続いているが、一方で半年以上の長期にわたり議論が事実上空転している状況には、参加者の間にえん戦気分が蔓延しつつあるのも事実。会合の休憩時間には、複数の参加者から「何でもいいから早く合意して欲しい」という声も聞かれた。

 また、SBB・アッカの両事業者は既に今年1月、上り3Mbpsサービスの予約受付を開始しており、そろそろ受け付け開始から半年近くが経過しようとしている。もちろん「TTCでの結論が出る前にフライングで予約受付を開始した両社が悪い」と言ってしまえばそれまでだが、上りの高速サービスを期待して同サービスに申し込んだ一般ユーザーのことも考えると、上り高速化ができる・できないに関わらず、そろそろ何らかの結論を出すことがユーザーのためにも必要ではないだろうか。

 上記でも述べたように、上り276kHz以下の帯域における距離制限については一応の合意ができているわけだから、まずはその部分だけでも早期に合意してサービス提供が行えるようにするのが筋だと考えるのは筆者だけではないはず。もし可能であればDSL専門委員会を待たずして参加者が合意できることを願わずにやまない。

 それともう一つ。もしDSL専門委員会の表決に結論が持ち越された場合、今のところ「DSL専門委員会については議事を公開する予定はない」(TTC事務局)とのことだが、そもそも総務省の情報通信審議会・DSL作業班がまとめた報告書には、

 「TTCにおけるDSLスペクトル管理標準の策定・変更の議論は、利害対立が想定されることから、議論の公平性・透明性の観点から、関係者に対して公開により行われることが望まれる。」(DSL作業班報告書(案)・5-1「TTCにおけるDSLスペクトル管理標準策定の進め方」より引用)との記載がある。

 今度のDSL専門委員会はまさしくスペクトル管理標準をめぐって議論が行われる場である以上、議事が公開されなければこの総務省の報告書に反することになってしまう。もし関係者の方がこの記事をお読みであれば、ぜひ議事の公開についての検討をお願いしたいのだが……。

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