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米国企業は中国の検閲とどう向き合うべきか

» 2005年06月22日 20時34分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 米国の企業は中国で行われるインターネットフィルタリングに手を貸すべきだろうか。この1週間に2回、この疑問が頭に浮かんだ。私は1つのケースに関しては、ユタ州の小さな会社が正しいことをやっていると思っている。だがもう1つのケースでは、MicrosoftやYahoo!、Google、Ciscoは人権よりも利益を優先していると思う。

 どちらの場合も、各社はいずれも中国の人々がインターネットでできることに影響するソフトやサービスを提供している。では何が違うのか。そして結局のところ、Microsoftなどにとってほかにやりようはないのだろうか。

 最初のケースは、ContentWatchという企業が立派なことをしていると評価できる。彼らはさまざまな受賞実績のあるWebフィルタリングソフトを中国の親向けに提供中だ。このニュースを最初に聞いたときは、学校関係者が生徒に見せるインターネットコンテンツをフィルタリングするためにこのソフトを使うのではないかと心配した。もちろん、それ自体は何も問題ない。インターネットには子供が見るべきでないものがたくさんあるからだ。これはどの国でも変わらない。ポルノは中華人民共和国でも、ほかの国と同じように大きな問題だろう。

 つまり、中国の親や学校が米国の場合と同様に、フィルタリングソフトを使って子供たちをいかがわしいコンテンツから守ろうとするのは理にかなっている。最初に私が心配したのは、宗教や政治がらみのコンテンツに関するフィルタが、このソフトにひそかに追加されているのではないかということだった。

 この懸念を和らげようと、ContentWatchの開発者は、フィルタリングの基準は彼らの製品にハードコードされていて、ソースコードが米国の外に出ることは決してないと説明してくれた。もちろん、ソフトは中国の顧客向けにカスタマイズされているだろうが、そのフィルタリングの厳密さは、米国の顧客に売られている製品以上のレベルではない(また、以下のレベルでもない)と確信した次第だ。

 これは、中国のインターネットコンテンツフィルタリングを手伝う米国企業が正しいこと、われわれが誇るべきことを行っている例だ。この製品は中国の親が責任を果たす助けになっている。

 先週にはその逆の例も明らかになった。国境なき記者団という団体が、Microsoftが中国政府の依頼に応じて、中国でのブログサービスで投稿を検閲して特定の言葉を書き込めないようにしていると批判したのだ。Microsoftは、中国の抑圧的な要求に従って商品に手を加えたGoogle、Yahoo!、Ciscoといった企業の列に加わったことになる。

 インターネットの政治的・宗教的コンテンツに対する中国の検閲(どの国の場合についてもだが)に加担する米国企業は、私には支持しにくい。中国の人々はほかのすべての人と同じく、言論と表現の自由を与えられるべきだ。だが、中国はMicrosoftなどの企業がどんな対応を取ろうと、どのみちインターネットを検閲するだろう。こうした企業がやっていることは、もっと広い文脈でとらえるべきなのだろう。

 そのために、既に軌道に乗っている中国の経済発展のこれからの行方を占ってみよう。中国経済の「奇跡」が日本や韓国と違って壁に突き当たらなかった場合、2つのシナリオの展開が考えられる。

 その1つは、中国経済の自由化に続いて、成長する中産階級が求める民主的改革が進むというものだ。これはドナルド・ラムズフェルド国防長官などが最近表明した見方だ。同氏は先ごろ報道陣に対し、中国では15年後くらいまでに経済改革に続いて政治の自由化が進展すると考えていると語った。

 ラムズフェルド氏が正しければ、中国に対する米国の経済的関与は非常に好ましいことであり、長期的に見て民主化を促進することになる。Microsoft、Yahoo!、Google、Ciscoなど中国で活動する企業は、今は完璧とはいかないかもしれないが、いずれはこうした米国企業の取り組みは改善され、何らかの民主主義やより開放的な社会への中国の移行を必ず後押しするようになるというわけだ。

 もう1つの考えられる展開は、中国の経済成長に見合った政治改革が実現しないという悪夢のシナリオだ。中国は一党独裁体制を維持し、全体主義国家でありながら驚異的な経済力を持つわけだ。そうした強大な中国は、西側民主主義国にとって過去最大の脅威となるかもしれない。

 中国とのビジネスは間違いなくギャンブルだ。だがわれわれが手を出さなくても、ほかの国は進めるだろう。そして米国の企業は、世界最大となる可能性のあるIT市場の蚊帳の外に置かれることになる。しかし、中国でビジネスをする米国企業は、民主主義と人権の促進という米国の基本政策をサポートする責任がある。

 ただ、そのためにはどうすればよいか、明確な答えは出ていない。中国で物事を進めるには、一歩後退・二歩前進というやり方が必要かもしれないから、Microsoftなどを厳しく責める気にはならない。少なくとも今のところは。

 人権団体は、米国企業の中国やほかの国での活動に目を光らせるべきだ。米国企業はこうした懸念に敏感でなければならない。そして中国政府に協力するに当たっては、中国で使われるコンテンツフィルタが、親が子供を目の毒になるWebサイトから守るためだけのものになる日が来るように、そのために役立つ協力をすることを心掛けるべきだ。

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