コラム
» 2007年09月10日 16時00分 UPDATE

金融・経済コラム:日本の携帯電話がつまらない理由はどこに?

コンシューマーへの訴求ポイントとして、かつて重要視されたのは企業ブランドでしたが、現在では商品ブランドが最も重要なものになりました。各社の携帯電話名称でのブランド展開を例にとり解説します。

[保田隆明,ITmedia]

iPod→iPhone→iPod:収穫逓増のブランド力

 アップルが「iPod touch」を発表しました。iPhoneで人気のインタフェースを用いたiPodですが、ここ数年の動きを振り返ると、まずiPodで人気を博し、そこで培った商品ブランド力を上手く利用してiPhoneを発表し、そしてiPhoneでの人気をiPodに還流させるという流れです。iPod、iPhoneの人気の理由は、商品自体の素晴らしさは当然のこととして、その商品ブランド力を高める戦略のうまさも見逃せないところです。

企業ブランドより商品ブランドが重要な時代

 ブランド力といえば、かつて重要だったのは企業のブランド力でしたが、近年は商品のブランド力がより重要となってきています。例えば、液晶、プラズマテレビでは、「AQUOS」と「VIERA」が人気ですが、私たちはそれぞれをシャープと松下電器が作っているということは知らなくとも、AQUOSとVIERAという名前は知っています。また、デジカメの人気商品の1つに「EXILIM」というブランドがありますが、これもEXILIMの名前は知っていても、それをカシオが作っていることを知っている人はあまり多くないと思われます。

 シャープはAQUOS携帯を、カシオはEXLIM携帯をそれぞれ販売しています。両方とも、液晶テレビ、デジカメで培ったブランド力を携帯電話に載せることにより携帯電話市場での差別化と訴求力向上を図る戦略です。これは、iPodとiPhoneの関係に少し似ています。

いつまで続く? 無機質な端末名称

 一方、日本の携帯市場で半分のシェアを占めるドコモ向けの携帯電話の新商品発売を見てみると、メーカーが一斉に同じタイミングで新機種を投入してきます。しかも、商品は「N904i」「F904i」「D904i」というように、企業の名前(NECのNや富士通のF)とシリーズ名(904i)をくっつけただけのものであり、それだけではどんな端末なのか想像はつきません。iPhoneであれば、iPodのようなものを想像しますし、AQUOS携帯、EXILIM携帯も、AQUOSやEXILIM搭載が特徴だということが分かります。それらに比べると、N904i、F904i、D904iのような名称はあまりに物足りない印象です。

 そもそも、ユーザーにとって、どこの企業が端末を製造しているかという情報は、今やほとんど重要でなくなっています。かつては、Nを使っていた人は、機種変更後も引き続きNを使いたいというニーズがありましたが、それはまだ携帯電話市場が比較的日本で新しかった時代の話であり、今ユーザーが最も求めているのは端末としての新規性や驚きです。N904i、F904i、D904iという無機質な名称は、新規性や驚きが存在しないことをうたっているのと同義であり、ユーザーとキャリア側、メーカー側で大きなギャップがあります。

 むしろ、新機能で勝負するのではなく、ターゲット層を明確にしているらくらくホンの方が次々と出てくる新機種と呼ばれる端末より、よっぽどユーザーにとっては価値が高いものです。

原因はどこに?

 商品力、そして、ライフスタイル提案型商品が消費者の人気を集めるのは、B2Cの商売では王道ですが、携帯電話からはその両方が消えてしまっています。キャリア側の戦略によるものなのか、販売奨励金制度によってメーカーが甘やかされすぎたのか。料金制度の見直し議論が盛り上がりつつありますが、その過程で、代わり映えしない端末だらけの現状が打開されることも希望する次第です。

関連キーワード

ブランド戦略 | iPod | iPhone | AQUOS | EXILIM


保田隆明氏のプロフィール

リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券にてM&Aアドバイザリー、資金調達案件を担当。2004年春にソーシャルネットワーキングサイト運営会社を起業。同事業譲渡後、ベンチャーキャピタル業に従事。2006年1月よりワクワク経済研究所LLP代表パートナー。現在は、テレビなど各種メディアで株式・経済・金融に関するコメンテーターとして活動。著書:『図解 株式市場とM&A』(翔泳社)、『恋する株式投資入門』(青春出版社)、『投資事業組合とは何か』(共著:ダイヤモンド社)、『投資銀行青春白書』(ダイヤモンド社)、『OL涼子の株式ダイアリー―恋もストップ高!』(共著:幻冬舎)、『口コミ2.0〜正直マーケティングのすすめ〜』(共著:明日香出版社)、『M&A時代 企業価値のホントの考え方』(共著:ダイヤモンド社)『なぜ株式投資はもうからないのか』(ソフトバンク新書)。ブログはhttp://wkwk.tv/chou/


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