コラム
» 2007年12月14日 11時30分 UPDATE

科学なニュースとニュースの科学:この本読んだ? 2007年注目の科学ノンフィクション(前編)

年末特別企画として2回にわたり、堺三保さんが2007年に読んだ科学関連のノンフィクションから、これぞという12冊をピックアップしてもらって紹介いたします。「科学なニュースとニュースの科学版選定図書」をお楽しみください。

[堺三保,ITmedia]

 いやー、なんだか気がついたらあっというまにもう2007年も末ですな。って、どういう前ふりだよ>自分。

 かなり強引な前ふりはともかく、年末ということもあって、今回はちょっといつもと趣向を変えてみたい。

 筆者が今年読んだ科学ノンフィクションの中から、気になったものをピックアップして、紹介していきたいのだ。ちょうど、世間もそろそろ年末休暇。読みこぼしのある人は、良い機会だから、こたつにでも入ってのんびり読書三昧というのもいいんじゃないだろうか。

 さて、まずは筆者が選んだ本のリストを見ていただこう(ちなみに、あくまでも「筆者が今年読んだ」なので、昨年末に刊行された本も何冊か含まれているのでそこはご了承ください)。

【宇宙論】

『ワープする宇宙』リサ・ランドール/NHK出版

『宇宙のランドスケープ』レオナルド・サスキンド/日経BP社

『宇宙を復号[デコード]する』チャールズ・サイフェ/早川書房


【生物と進化】

『シマウマの縞 蝶の模様』ショーン・B・キャロル/光文社

『ヤモリの指』ピーター・フォーブズ/早川書房


 この後【意識と知能】5冊、【その他】2冊と続きます。書名は次回のお楽しみ。

 以上12冊、大まかにジャンル分けしてみたので、ここからはそれぞれのジャンルごとに紹介していきたい。

【宇宙論】

イラスト

 まずは宇宙論に関する3冊。いずれも、現代物理学の最先端の話題についての本であると同時に、そこに至るまで基本的な学説や理論をも紹介しているため、話題が重複している部分がけっこうある。でも、それを繰り返し読むことは、全然ムダなことじゃなくて、同じことをそれぞれの筆者が自分の言葉で説明しているので、少しずつ視点が違うため、読み比べてみるとおもしろいし、何よりそうやって繰り返し同じ概念について読むことで、理解が深まるからだ。

 まあ、それはともかく、個々の本はどこが違うのかをザッと紹介してみよう。

 『ワープする宇宙』は、ひも理論と呼ばれる現代物理の理論(これは、物質の最小にして究極の構成要素は原子やクォークといった「粒子」ではなく「ひも」のような形状をしているというもの)から導き出された、最新の宇宙論である「余剰次元」仮説と「ブレーン宇宙」モデルについて、仮説の提唱者自身が解説したもの。

 一方、『宇宙のランドスケープ』は、そのブレーン仮説からさらに一歩推論を推し進め、我々の感知している宇宙は、さらに広大な宇宙の一部分にすぎないという「メガバース」理論を提唱、それによって「人間原理(宇宙が存在しているのは、それを観測している人間がいるからだとする説)」問題に対してある種の答を用意しようという野心的な本。これもまた、理論の提唱者自身が書いているため、主張が非常にはっきりしているところが、『ワープする宇宙』と共通した特徴。

 少し毛色が違っているのが『宇宙を復号する』。なにせこの本は、情報理論という物理ではなく数学理論の立場から、量子論やブラックホールについて読み解こうというものなのだ。ちなみに、『宇宙のランドスケープ』と『宇宙を復号する』には共通点がある。それは、量子論上の問題としてこれまで語られてきた平行宇宙もしくは多元宇宙の存在する可能性について、ひも理論や情報理論の見地から、その存在を肯定しようとしているところだ。

 平行宇宙というアイデア自体は、古くから存在していて、特に筆者のようなSFファンには目新しくはないものだが、以上の3冊を通して読むと、今まで想像していたものとはずいぶんと違う、新しいイメージの平行宇宙が見えてくるところがおもしろい。

 どの本も数式を使わずに説明している入門書であるため、これだけ読んで分かったような気になるのは禁物だし、安易にイメージだけをふくらませ過ぎちゃうと、誤った解釈をしてしまいかねないのが難点だけど、逆に言えば、それをきちんと頭に入れておけば、こんなに刺激的な読書体験もそうそうないだろう。なんせ、宇宙の構造という、「世界の成り立ち」についての謎に迫れちゃうんだから。

【生物と進化】

 分子生物学の急速な発達は、遺伝子解析や分岐学など、生物学のさまざまな分野に大きな発展をもたらしているが、「進化発生生物学」通称「エボデボ」もまたそのひとつだ。この研究は、古くからある学問である比較形態学あるいは比較発生学に、分子レベルでの実証をおこなってみせようというものなのだ。

 『シマウマの縞 蝶の模様』は、そのエボデボの第一人者が書いたもので、遺伝子上の共通するコードから、様々な生物の身体機能が発現するさまを豊富な画像つきで紹介し、いかにして生物は進化を遂げてきたのかを説いていて、実に刺激的だ。

 上記の本同様、生物の不思議を味わえるのが『ヤモリの指』だ。

 こちらは、生物たちの持つ実に多彩な能力が、どのようにして生み出されているのかを解明、それをヒントにして実用性のある科学技術を生み出そうという「バイオ・インスピレーション」と呼ばれる研究について解説したもの。生物学とテクノロジーという2つの異なる分野のおもしろさが両方味わえるところがおもしろい。

 って、まだ半分も紹介してないのに、紙数が尽きた。続きはこの本読んだ? 2007年注目の科学ノンフィクション(後編)で!

関連キーワード

遺伝子 | 宇宙


堺三保氏のプロフィール

作家/脚本家/翻訳家/批評家。

1963年、大阪生。関西大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程前期修了(工学修士)。NTTデータ通信に勤務中の1990年頃より執筆活動を始め、94年に文筆専業となる。得意なフィールドはSF、ミステリ等。アメリカのテレビドラマとコミックスについては特に詳しい。SF設定及びシナリオライターとして参加したテレビアニメ作品多数。最近の仕事では、『ダイ・ハード4.0』(翻訳:扶桑社)がある。仕事一覧はURLを参照されたし。2007年1月より、USCこと南カリフォルニア大学大学院映画学部のfilm productionコースに留学中。目標は日米両国で仕事ができる映像演出家。

ウェブサイトはhttp://www.kt.rim.or.jp/~m_sakai/、ブログは堺三保の「人生は四十一から」


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