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Googleの本当の狙いはMicrosoftの妨害?

» 2008年02月05日 17時27分 公開
[Steven J. Vaughan-Nichols,eWEEK]
eWEEK

 もはや形勢は逆転している。MicrosoftはこれまでFUD戦略(ユーザーの恐怖、不安、疑念をあおるマーケティング戦略)を使って競争を勝ち抜き、数百億ドルもの事業を展開してきた。だが今や同社によるYahoo!の買収提案に異議を唱え、Microsoftが自らFUD攻撃を受ける側になる様子を楽しんで見ているのはGoogleだ。

 MicrosoftがYahoo!の買収を提案したのを受けて、Googleは週明けを待たずに公式見解を発表した。Googleの開発担当上級副社長兼最高法務責任者のデビッド・ドラモンド氏は2月3日、「Yahoo!に対するMicrosoftの敵対的買収提案は厄介な問題を提起している」とのコメントを発表している。

 敵対的買収? Yahoo!の現在の株価(過去4年間で最安値)に62%上乗せして、1株当たり31ドル、総額446億ドルで買収するという提案が敵対的? わお、それなら、わたしだったらいつでも敵対的買収をしてほしいくらいだ。

 お忘れかもしれないので、念のために言っておくが、Yahoo!は苦境に陥っていた。いや、Yahoo!は苦境に陥っている。もしわたしがYahoo!の株主ならば、誰かが62%も上乗せした価格でYahoo!株を無駄買い、いや購入したいと申し出てきてくれたら、大喜びだ。

 そして、もしMicrosoftが本気でYahoo!を買収したいのであれば、Yahoo!がポイズンピルを発動し、乗っ取り防止に動く可能性にも対処しなければならない。実際のところ、MicrosoftはYahoo!を買収するために借金しなければならないようだ。もしYahoo!がポイズンピルを発動すれば、この取り引きを成立させるために、Microsoftはますます多額の借金を余儀なくされるだろう。

 あのMicrosoftが何十億ドルもの負債を抱えることになれば、Googleもさぞや胸を痛めることだろう。

 世間では、MicrosoftからYahoo!を守るために、GoogleがYahoo!を買収するとの憶測も流れている。わたしがこうした記事に関して言えるのは、これはYahoo!買収のためにMicrosoftにさらに多額のお金を支払わせるための試みである、ということだけだ。

 なぜなら、そう、たとえジョージ・W・ブッシュ大統領の下であっても、米連邦取引委員会(FTC)はGoogleによるYahoo!の買収を決して承認したりはしないはずだからだ。実際、あるアナリストなどは、今回の騒動を受けてYahoo!の株価が1株当たり39ドルから45ドルにまで値上がりするとまで予想している。

 残念ながら、これは『バック・トゥー・ザ・フューチャー』ではないから、デロリアンのタイムマシンなどない。Yahoo!の全盛期ははるか昔に終わっている。だがもしGoogleとYahoo!、そしてアナリストの力で、Yahoo!買収のためにMicrosoftにもっと多額のお金を使わせることができれば、それはYahoo!の株主にとってますます結構なことであり、Googleにとっても不満はないはずだ。

 Microsoftはまた、この取り引きを迅速に進めたいとも望んでいる。ああ、でもそれは無理だろう。Googleはこの取り引きを難航させるためにできることは何でもするだろう。何もGoogleはMicrosoftとYahoo!の合併を恐れているわけではない。では、何のシナジー効果も持たない下り坂の2社が合併したところで、どんな結果が待っているというのだろう? 「多額の借金を抱えた企業がさらに急速に転落する」というのが、その答えだ。

 だがGoogleがこの買収の成立を遅らせることができようができまいが、その先、この2社のシステムを統合するための苦しい時期がさらに長く続くであろうことは確かだ。なにしろ、Yahoo!だって愚かではないから、Yahoo! Music以外はどのサービスにもMicrosoftのソフトウェアは使っていない。残り? 残りはオープンソースだ。Googleが使っているのと同じだ。ああ、それにYahoo!はYahoo! Musicの打ち切りを検討中だった(訳注:Yahoo!は4日、「Yahoo! Music Unlimited」のRhapsodyへの移行を発表した)。うん、それなら、Yahoo!とMicrosoftのシステムの統合は楽勝だろう。

 Googleの指摘は確かに的を射ている。例えば、ドラモンド氏は「Microsoftはこれまでしばしばプロプライエタリな独占的地位を確立し、隣接する新しい分野にその独占的地位を活用しようとしてきた」と指摘している。同氏は、特にインスタントメッセージング(IM)とWebメールに関して、懸念を示している。同氏の指摘は実に的確だ。それこそ、まさに昔からの典型的なMicrosoftだ。

 わたしは個人的には、Internet Explorer(IE) 7を使わなければ読めない「Yahsoft!」というポータルの画面を容易に想像できる。もちろん、Microsoftもそんなことをするほど愚かではないだろうけれど、でも最近のMicrosoftはまったく才知に欠けている。それに、そんなプロプライエタリな方向に進めば、Googleの思うつぼだ。これはデスクトップではなく、インターネットの世界なのだから。Microsoftがいくら望んでも、Microsoftにはインターネットのルールは決められない。Yahoo!を買収したからといって、それに変わりはないはずだ。

 改めて言うが、わたしが思うに、MicrosoftにはYahoo!を買収する必要があるのだろう。そして、Googleはそれをできる限り邪魔しようとするだろう。そして、GoogleがそのためにFUD戦略のような方法を採るとすれば、まさにMicrosoftにとっては形勢の逆転だ。Microsoftにピンチ到来? 慣れるしかない。

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