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Yahoo!に買収する価値はあるのか?

» 2008年02月14日 17時50分 公開
[Steven J. Vaughan-Nichols,eWEEK]
eWEEK

 もしわたしが10億ドル持っていれば、わたしはお金持ちだ。でもYahoo!を買収するつもりなら、それではまだ立候補すらできない。

 Microsoftは先日Yahoo!に対し、その時点でのYahoo!の株価に62%上乗せした1株当たり31ドル、総額446億ドルでの買収を提案した。それを受けて、Yahoo!の取締役会はどう反応したか? 彼らは「当社をあまりに過小評価している」として、この買収提案を拒否したのだ。

 やれやれ、わたしも446億ドルの買収提案を拒否してみたいものだ。それにしても、ではYahoo!は幾らなら妥当と思うのだろう? 何人かの証券アナリストがわたしにほのめかしたように、そう、600億ドルぐらいだろうか? デイトレーダー仲間の気分を害するようなことは言いたくないが、でも彼らのそうした見積もりはどうも少し欲ばり過ぎではないだろうか?

 実際、多くの人々はMicrohooの誕生などそれほど気に掛けていない。もちろん、Googleにとっては気に入らないことだろうが、GoogleにはGoogleの優先事項がある。もっともMicrosoftによるYahoo!の買収提案に干渉することは、Googleにとってトップに近い優先項目だ。Googleに関する限り、Microsoftがこの買収に多額のお金をつぎ込めばつぎ込むほど、ますます結構なことだからだ。

 だが中には、この計画を本当に嫌がっている向きもある。ニューヨークに拠点を置くビジネスコミュニティー向けのニュースサイトSilicon Alley Insiderの著名なCEOで編集長でもあるヘンリー・ブロジェット氏は、この買収提案について「災難をもたらす動きだ」と指摘している。さらに同氏はMicrosoftのスティーブ・バルマーCEOについて「彼は失敗に慣れていない。彼らは理論的には賢いことをやっているが、うまくはいかないだろう」とまで語っている。

 なぜか? そう、いつものよくある理由だ。MicrosoftのWindowsベースのソフトウェアと、FreeBSDやオープンソースをベースとしたYahoo!のWeb2.0アプリケーションの間には真のシナジー効果は一切ない。両社の企業文化も水と油のように混じり合わない。そして忘れてならないのは、Yahoo!は苦境に陥っているという点だ。わたしがこのコラムを書いている間にも、Yahoo!は1000人強の従業員をクビ、おっと失礼、レイオフし始めているだろう。

 Yahoo!にはどうか、Microsoftによる評価がどのように過小評価なのかを説明してほしい。今回レイオフされる従業員たちも、その詳細を聞きたがっているに違いない。

 一方、MicrosoftはYahoo!が発表した買収拒否の方針にひるむことなく、買収をあきらめない意向を表明している。だが同社はまだ買収額の引き上げは行っていない。その代わり、同社はYahoo!の株主に取締役会の方針よりもMicrosoftの買収提案を受け入れてもらえないかを検討中のようだ。実際、Yahoo!の株主のうち、Group Bという名称で呼ばれるインフォーマルグループはこの買収提案に賛成しているようだ。

 Group Bは既に1年以上前から、Yahoo!に経営方針の大幅な転換を求めて尽力している。彼らはYahoo!の前CEOであるテリー・セメル氏と現在の取締役会が同社を失墜させたと考えているのだ。ここ数年のYahoo!のお粗末な業績を見れば、彼らの主張も納得できる。

 Group Bはエリック・ジャクソン氏をリーダーにYahoo!の現従業員と元従業員総勢100人で構成され、保有株式は210万株。同グループは最善の選択肢を取りたいと考えている。そして、今のところ、それはMicrosoftの提案だ。「われわれはYahoo!が今の取締役会と経営陣のまま独自に事業を継続していくことを望んでいない」とジャクソン氏は自身のブログで語っている

 だが好むと好まざるとにかかわらず、Yahoo!の株式全体からするとGroup Bの保有分はほんのわずかだ。Group Bは目下、ほかの株主にも賛同を呼び掛けている。Microsoftもほかの株主が彼らの方針に加わることに期待しているところだ。

 だがわたしが思うに、Microsoftはいずれにせよ、この買収を成立させるためには買収価格を引き上げなければならないのではないだろうか。わたしは今でも、MicrosoftにはYahoo!が必要だと思っている。その買収が災難をもたらす可能性があるという意見にも賛成だ。そしてわたしは、両社の統合には甚大な労力を要するであろうとの意見にも賛成だ。とはいえ、Microsoftにほかにどんな選択肢があるというのだろう?

 わたしの同僚のMicrosoft Watch編集者、ジョー・ウィルコックスは最近、次のように語っている。「Microsoftの買収提案は、それが本気であるのなら、サービスプラットフォームがベーパーウェアであることを明かしているようなものだ。確かにMicrosoftはこれまでそれなりのものを構築してきたが、それではGoogleと争うには不十分ということなのだろう。皆が思うよりも自分たちがGoogleにはるかに後れを取っているということを、Microsoftは暗黙のうちに認めたことになる」

 わたしもまったく同感だ。チェスの世界では、ひどく不利な場面に追い込まれた状況を「ツークツワンク(zugzwang)」と呼ぶことがある。これはドイツ語からきたチェス用語で、「動くと不利、しかも非常に不利になるにもかかわらず、動かなければならない状況」を示している。Microsoftよ、ツークツワンクへようこそ。オンラインでの地盤を強化したいのなら、Yahoo!を買収するしかない。だが、どんな方法を用いようと、そのせいで痛い目に遭うのは避けられないだろう。

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