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ドットコム破たんを政府が救済していたら

» 2008年10月17日 16時07分 公開
[Eric Lundquist,eWEEK]
eWEEK

 インターネットバブルがはじけた2001年、もし米政府がドットコム企業救済のため7500億ドルを拠出していたとしたら、どうなっていただろう。

 米政府が徹底した自由市場個人主義(気の毒なLehman Brothers、去り際に尻をドアにぶつけないように)から、社会主義の銀行天国(米財務省に紙とインクがある限り破たんすることはない)へと宗旨替えするのを目の当たりにしながら、わたしはそんなことを考えた。当時ドットコム企業は、破たんさせるわけにはいかないほど重要で大きな存在だっただろうか。

 もしそう判断されていたとしたら、わたしの想像では世界は次のようになっていたはずだ。

Webvan(ネット食品配達企業)

 米政府はWebvanに100億ドルの現金を注入して2001年の経営破たんから救済する方針を決めた。同社のネット食品配達事業が存続できなければ、われわれみんな、今ごろはひどい食糧危機に見舞われていたに違いない。ネットで食品を注文することはできても、Webvanがなければ食品を店から自宅に届けてもらう手段が存在しない。自宅から店へ買ったものを取りに行く手段を誰も思い付かないため、食料品店は未配達の在庫であふれかえる。そうなったら想像し難い規模の食料余剰(店)と食料不足(家庭)が生じ、国は対応を迫られる。

 人々が買い物リストを持って車で店に出掛ける経済を思い描いた起業家も少数いたかもしれないが、経済専門家は、それがはやる可能性が大きいとは考えなかった。政府エコノミストの試算では、10ドル分のビールとチップス配達1件につき財務省には150ドルの経費が掛かり、これは毎年1%ずつ減少が見込まれる。

Pets.com(オンラインペット用品ショップ)

 米政府が2000年にPets.com救済のため20億ドルを拠出すると決めなければ、田舎町には餓えて荒れ狂う危険なペットがうようよしていただろう。家で腹をすかせたペットと、ドッグフードでいっぱいの倉庫の間の橋渡しをどうするかという問題はWebvanと同じだが、ペット危機にはもう1つはるかに残酷な側面があった。人形のようにかわいい子犬が腹をすかせたとき、飼い主が突然食べ物に見えるということを、飼い主たちはほとんど知らなかった。

 ここでも政府の資金が助けに入り、ドッグフードとキャットフードを届ける自前のトラック部隊を投入した。実に気が利いていた。

CMGi(ネット事業開発・運営会社)

 CMGiに500億ドルを注入するという米政府の決定がなかったら、もちろんベンチャーキャピタルという資金繰りの手段も行き詰まって失敗していただろう。企業には製品もノウハウも売り上げもいらないという革命的アイデアは、存続させ奨励すべき理念だった。政府の介入でこのドットコム企業が形成する経済を発展させるという意思がなければ、新興企業は本物の客が本物の金を払って買ってくれる本物の製品を出すことを強いられていただろう。そんなことにならなくてよかっただろう?

COMDEX(IT関連展示会)

 そしてラスベガスの展示会COMDEXのために50億ドルを注ぎ込むという政府の決定がなかったら、ハイテク業界はどうなっていたことか。COMDEXは、売り手と買い手が飲みながら商談できる唯一の場だった。それにハイテクマニアが新しい玩具を物色するのにふさわしい場としてラスベガス以外の場所や会場は考えられない。

 年1回のイベントに補助金を出して世界中のハイテクマニアにただでラスベガスを訪れてもらうことで、ハイテク業界の存続が保証されるだけでなく、果てしない食べ放題とエルビスの物まねとラップダンスは、あらゆる文明を発展させてきた。

 とにかく、言いたいことは分かってもらえたと思う。われわれを混乱に導くような連中を救済しても、あまり道理にかなわないこともあるのだ。

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