米金融危機、IT業界への影響は?
わたしは最近、現在の金融危機の中でITが果たしてきた役割についてコラムを書いた。このコラムの内容を要約すると、次のようになる。「前代未聞にも、高価な教育を受けた多くの優秀な経営者が、ITに多大な費用を投資したにもかかわらず、自分の会社の財務的健全性をまるで分かっていなかった」
このコラムには多くの反響があった。それらは次のように要約できる。「あなたは本当に、誰か1人でも、今問題になっているいかさまを隠すのではなく、明るみに出すコンピュータシステムを開発するという、波風を立てるようなことをすると思ったのか」
なるほど。わたしが「少なくとも何人かの経営者は、普通の人のために立ち上がるだろう」と考えたのは間違いだったということだろう。
いずれにしても、政府は、金融機関という馬が納屋から出て行って随分たった後で、ようやく戸締まりを厳重にしようとしている。次に何が起こるのか。わたしは以下のように予想している。
1. Enron事件が起きた後、規制対応のために多額のIT投資が行われたとあなたが思っているとしたら、それはまだ序の口だ。金融危機を生き延びた企業は、はしの上げ下ろしまで指図するような詳細な報告・開示義務に従わなければならなくなるだろう。そうなれば、解雇された金融のプロたちにとって就職のチャンスだ。彼らはいきなりコンサルタントに早変わりするだろう。アウトソーサーや大手ITベンダー、そしてこの手のスタッフが中心の新しいコンサルティング会社がウォール街に押し寄せ、IT投資を金融危機の再発を防ぐ対策として宣伝するだろう。
2. コンピュータ業界はにわかに、大学生や、コンピュータビジネスを避けて金融サービス業界に殺到していた最近の卒業生にとって、優良な就職先に見えるようになるだろう。アウトソーシングやクラウドコンピューティング、あるいは外国人技術者向け就労ビザの発給拡大をめぐって、IT関連の雇用について悲観的な予測も出ているが、コンピュータ業界の求人需要はなかなか強そうだ。ベテランプログラマーの引退が進み、企業が、今後の経営においてコンピュータシステムの継続的活用がより大きな意味を持つことに気付いているからだ。Javaプログラミングのスキルを持つことの方が、金融デリバティブを扱った経験よりも重要になり、コンピュータ科学の中古教科書の販売が上向くだろう。
3. 企業はより的確なビジネス分析を目指しており、そうした中で求人やハイテク新興企業の事業チャンスが拡大するだろう。景気の先行きが不透明な今、企業はどのような領域に投資するかを慎重に判断しなければならないことが背景にある。デジタル化が遅れていた業界(電力、空調、運輸などが挙げられると思う)の企業が、好むと好まざるとにかかわらず、コンピュータインフラの効率的な運用のパートナーになるだろう。
4. ドットコムバブル崩壊が歴史に記憶され、今度は不動産バブルがはじけ、それが引き金となって金融バブルが壮大な崩壊のただ中にある。そこで問題となるのは、次のバブルはどのようなものか、ITはその中でどのような役割を果たすかだ。これまで、確固とした経済的な基盤がないまま、膨大な資金が仮想化やクラウドコンピューティング、ソーシャルネットワーキングの推進につぎ込まれており、その実態を冷静に見ると、既にバブルが発生しているのかもしれない。
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