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「Windows 7」の名称に込められた深い理由

» 2009年02月13日 14時22分 公開
[Joe Wilcox ,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftの宣伝担当がこれほど頭が切れるはずがあるだろうか。

 そんな疑問を持ったのは、前回の記事を書いている間にふとひらめいてからだ。「Windows 7」という奇妙なブランドの命名に込められた宣伝上の意味が、突然分かったのだ。

 Microsoftの販促キャンペーン「Windows. Life Without Walls」は、特定のOSを離れてマスターブランド(スーパーブランドと言ってもいい)であるWindowsに立ち返るというのが主眼だった。過去にMicrosoft経営陣からブランドについて話を聞いた中では、Windowsが絶大な認知度を持つブランドとして強調されていた。「Windows」が付いたLiveサービスがこれほど多くあり、Windows Liveに名称が変更されたMSN製品・サービスがこれほど多いのは、多分それが唯一の理由なのだろう。

 しかしMicrosoftはブログ、ライバル、批評家、マニア、マスコミという問題を抱えている。そのほとんどが言葉を省略しがちだ。XPやVistaからWindowsを省いてしまう。ブランドのインパクトが薄れる。VistaはWindows Vistaと同じではないのだ。

 物書きは、数字を放置しないようにと教えられている。これをするとほかと混同して分かりにくくなるからだ。Windows 95のことを95と言い、Windows 2000のことを2000と言う人がいるだろうか。皆無だ。Windows 7という名称を選ぶことにより、Microsoftは製品名の一部としてWindowsを使わざるを得ないように仕向けた。必ずだ。これによってWindowsブランドが強調される。これこそMicrosoftの望みだった。省略してVistaと言ってほしくないという、ただそれだけの理由で。

 しかしこのブランドの命名には、特にMicrosoftがブランドアイデンティティーとしてWindows重視を強める中で、前向きな理由もある。純粋に宣伝上の観点から、MicrosoftにとってはみんながWindows 7と呼んでくれた方がいい。

 その点で、省略語を使い続けているわたしは本当に厄介な存在だ。わたしはよく、Windows 7の意味で7を使う。しかしMicrosoftはわたしのような厄介者でさえ味方にできるのだ。企業というのは宣伝のために、1つの単語を自分のものにしてしまえる。Advertising Ageの11月号の記事の中でアル・ライズ氏は、「チェンジ」という言葉がバラク・オバマ陣営のものになった経緯について、次のように説明した。

 「ドライブ」という言葉がBMWに何をもたらしたか考えてみてほしい。BMWよりも楽しくドライブできる車があるだろうか。多分あるだろうが、そんなことは問題ではない。BMWは「ドライブ」と言われて心に浮かぶものを先取りした。残念なことに、心に浮かぶ1つの単語を自分のものにしている企業は数えるほどしかないのに、ほとんどがその単語をキャッチフレーズとして使ってさえいないのが現実だ。「プレステージ」(prestige)はMercedes-Benzのものだが同社はキャッチフレーズに使っていない。「リライアビリティ」(reliability=信頼性)といえばトヨタだが、同社もこの単語をキャッチフレーズとして使っていない。

 Microsoftは宣伝のための用語として「セブン」、さらには「7」の支配に出るだろうか。代わりに「ラッキー7」ではどうだろう。恐らくそうはならないだろう。宣伝上Microsoftが制したい、いや少なくとも復権させたい単語は「Windows」なのだ。そしてCokeの「the real thing」、Pepsiの「the Pepsi generation」と同様に、Microsoftが制したいフレーズは「I'm a PC」(わたしはパソコン)だ。

 「I'm a PC」シリーズは狙い通りのゲリラ戦法になり、そしてMicrosoftは甘い勝利を手にするだろう。マーケティング上の所有権は、「Hello, I'm a PC. And I'm a Mac」(パソコン君とMac君)のフレーズを使い始めたAppleにある。報復のためには頭を冷やすこと。その通りに違いない。

 想像するに、Microsoftの宣伝担当はわたしがブログで書いた通りのことを考えてこの名を付けたのだろう。そうでなければ運が良かったのだ。

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