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MRI検査にクローン牛──食肉の世界はどこまで行く?科学なニュースとニュースの科学

» 2009年03月19日 18時09分 公開
[ITmedia]

 今、世間じゃ草食系男子が流行りみたいだけど、筆者は「糖尿なんだから肉は控えろ」と医者にかたく言われているものの、どうしてもたまにはうまい肉が食べたくなって困ってる根っからの肉食系だったりする(意味が違うぞ>自分)。

 そんな、お肉大好きの筆者にとって、ちょっと気になるニュースが今年の初めに立て続けに聞こえてきた。

 1つめは、内閣府食品安全委員会の作業部会が、クローン牛やクローン豚の食品としての安全性を認める見通しになったというニュース。

photo 13年間冷凍されていた「安福」号の精巣と第1号クローン。近大のプレスリリースより

 2つめは、近畿大学と県畜産研究所の研究チームが、「飛騨牛」の元祖とされる牛と同じ遺伝子を持つクローン牛を、死後13年間冷凍されていた精巣を使って誕生させたというニュース。

 3つめは、放射線医学総合研究所の池平博夫チームリーダーらが、MRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像法)の断層画像で、生きている牛の肉のおいしさを予測できることを確認したというニュース。

 いや、そりゃまあ、安くておいしい肉が簡単に入手できればできるだけ、我々消費者は助かるわけだけど、正直「そこまでしますか?」って気に少しなっちゃったのも事実だったりして。

 もちろん、クローンというのは、元々の生き物とまったく同じもの(ものすごく単純化して言ってしまうと、人工的に一卵性双生児をあとから作るようなもの)だから、理論上は、遺伝子組み換え食品なんかよりも、さらに安全面の危険性はないわけだけど、とはいえ、倫理的に「そこまでやっちゃうのはどうよ」という気持ちもしなくはなかったり。「科学の濫用」という言葉が、一瞬脳裏をよぎっちゃったりしましたよ、ええ。

photo 人間用でもMRI装置はかなり大きい。日本のMRI装置メーカー、東芝メディカルシステムズのWebサイトより

 わざわざMRI使ってまで、牛の肉質を調べるっていうのも、贅沢というのか、何ていうのか……。いや、実験としてはおもしろいのは認めるけど。とはいえ、「生きた牛を丸ごと撮影できる大型装置を開発したい」とかって話は、これまた「そこまでしますか?」って感じだよなあ。どんだけ大きいMRI作る気ですか?(苦笑)

 ところで、MRIって、この20年くらいの間にすっかり普及した技術だけど、原理って知ってます? てか、いわゆるCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)とは別物だって知ってました? 次回はちょっとそのへんの話をしてみたいのでよろしく。

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堺三保氏のプロフィール

作家/脚本家/翻訳家/批評家。

1963年、大阪生。関西大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程前期修了(工学修士)。NTTデータ通信に勤務中の1990年頃より執筆活動を始め、94年に文筆専業となる。得意なフィールドはSF、ミステリ等。アメリカのテレビドラマとコミックスについては特に詳しい。SF設定及びシナリオライターとして参加したテレビアニメ作品多数。最近の仕事では、『ダイ・ハード4.0』(翻訳:扶桑社)がある。2007年1月より、USCこと南カリフォルニア大学大学院映画学部のfilm productionコースに留学中。目標は日米両国で仕事ができる映像演出家。

ブログは堺三保の「人生は四十一から」


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