連載
» 2007年05月25日 19時43分 UPDATE

シゴトハック研究所:シゴトハックを思いつくためのコツは?(2)【解決編】

思わずゴミ箱に腰掛けてしまう……。こんな欲求を喚起するものをアフォーダンスと呼びます。思わずやる気になるような工夫を仕事に施しておくことで、アフォーダンスの後押しを得て、仕事に入っていくことができるはずです。

[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 シゴトハックを思いつくためのコツは?

 コツ:思わずやる気が出てくるような「仕掛け」を組み込んでおく


 目の前にある仕事について、そのやり方が分かっていてもどうにもやる気が起きないということがあります。この「やる気問題」については、本連載でも何度か取り上げてきています。

 未来の自分へメッセージ──孫子の兵法に学ぶ「やる気」メソッド【解決編】では、やる気が出ないのは「次はどうせこうなるんだろう」という予想がついてしまうところから生まれる“飽き”に原因があるということで、自分にとって「予想外」となる要素を仕込んでおくという対策。

 「やっつけ仕事」を防ぐ段取り術【解決編】では、やる気が削がれてしまう原因を、完璧なスケジュールを立てることによって見通しがクリアになりすぎるところに求め、これを解消するために「2つの異なる仕事を交互に行う」という“山”と“谷”をスケジュールに盛り込む方法。

 環境の変化をチャンスに変えるには?【解決編】では、「環境ドリブン」という考え方を導入し、クルマに乗ればシートベルトを締めたくなるのと同じように、何らかの環境の変化が、関連するアクションを連鎖的に引き出してくるような仕組みを作ることで、やる気の有無にかかわらず仕事に取りかかれるようになるというアイデア。


 これらの共通点は、それまで持っていなかった「やる気」を引き出すためのきっかけを、あたかも自分の意志とは無関係のところから与えられるように仕込んでおくことだといえます。

 ある意味で、自分のために仕掛けておいたサプライズに自らびっくりしてしまうようなものですが、それが「予想外」であったり、「彩りのある起伏」に感じられたり、「特別な環境」だと感じられたりすれば、いずれも「やる気」を引き出すためのトリガーとして、想定通りのアクションに導いてくれるわけです。

何がアクションの「きっかけ」になるか

 例えば、目の前にドアノブがあれば思わず回したくなるものです。あるいは、乗っている電車の揺れが激しい時、手近に吊革や手すりがあれば、つかんでみたくなるでしょう。

 このように物の「構造」や「仕組み」は、それを利用したいという欲求を持っている人間を行動に駆り立てることができます。電車が揺れるという状況に置かれれば、「転倒したくない」という思いから「何かつかまるものを」ということで、吊革や手すりに手が伸びるわけです。特に欲求を持っていなくても、ドアノブのように目にするだけで「回したい」という欲求を喚起することもあります。

 このような欲求を引き起こす仕掛けをアフォーダンスといいます。冒頭でご紹介した一連の事例は、思わず仕事に取りかかりたくなるようにアフォーダンスをうまく利用したものと言えるでしょう。

手間をかけなくてもやる気が出てくるような「仕掛け」を組み込んでおく

 問題編では「ゴミ箱」をイスに代用する話が出てきました。これは、「座りたい」という欲求のなせるわざであり、座る直前に「座ることができそう」という判断を後押しするのが「ゴミ箱」と「イス」の両方が共通して持っている見た目の類似性です。

 たとえ「ゴミ箱」というものに「座る」という用途が想定されていなくても、「座りたい」という欲求が「座ることができるかもしれない」という期待を呼び起こし、そこに「ゴミ箱」にとっては新しい用途である「座る」という機能が生まれるわけです。

 あるいは本来は物を入れて運ぶ「段ボール箱」であっても、疲れていれば、イス代わりに腰掛けることもできるでしょう。欲求は、「本来の用途」という枠を乗り越えて新たな用途を作り出すカギになるのです。

 逆のアプローチで、道具を作る際に、見た目から「本来の用途」がにじみ出るような作り方をすることで、その道具を使いやすいものにできるはずです。ドアノブを回したくなるのは、思わず回したくなるような見た目や作りになっているからといえます。つまり、欲求を喚起する“アフォーダンス”を持っているわけです。

 仕事においても、特にその気がなくても思わずやる気になるような工夫を施しておくことで、アフォーダンスの後押しを得て、仕事に入っていくことができるはずです。

 例えば、「空欄があれば埋めたくなる」という心理を利用して、なかなか取りかかれない仕事について、とりあえず分かる範囲だけ先に進めて、ところどころ虫食い状態にしておきます。すると次にその仕事の続きをする際に、「空欄を埋めたい」という欲求を呼び起こすというアフォーダンスを発揮することができます。これは、あとで自分がその仕事に取りかかりたくなる仕掛けを用意しておくことになります。

 何もせずにそのまま先送りにしてしまうと、再度その仕事に向き合う際には前回と同じく「白紙の状態」から取りかかることになるため、非常に辛い思いをすることになるでしょう。

 このように、「空欄があれば埋めたくなる」という心理を利用することで、取りかかりにくい仕事にうまく取りかかるきっかけが与えられることになります。「分かる範囲だけ先に進める」ということであれば、さほど負担はないでしょう。そして、これによって得られる効用は、その負担の割には大きなものになります。アフォーダンスによって欲求が喚起されれば、あとは勢いに乗ることができるわけです。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『「手帳ブログ」のススメ』がある。


Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -