実施の1年半も前から綿密に計画を練り、周囲への理解と周知を徹底させて推し進めてきた大変革。
社員全員で種をまいたワークスタイルは、今現在GDO内でどう花開いたのだろうか。
「この制度は多少“大人”の制度。というのは、引っ込み事案な人は慣れるまで多少時間はかかるからです。それを解決するために、中途採用の方に関しては、1カ月間チューターが同席するチューター制度を採用しています。
また、せっかく充実したファシリティがありますから活用していますね。例えばエントランスではクライアントを招いてイベントパーティーをしたり、つい先日は当社初の新卒採用にあたり、会社説明会を全フロア使って実施したり。
さらにコスト面では通信費の30%削減、紙やトナーの50%削減しました。ただこれらはあくまで付随したにすぎない。それよりもメンタル面での効果が大きいですね。まずどこでも会議がすぐできますのでスピードも増しつつ、部署を超えた新たな発想が生み出されてきたこと。それから通信ではコスト面や使い勝手からPHSを採用したんですが、直通電話になりましたので責任感が生まれました。
それから上司のマネジメント管理に、より積極性が問われるようにもなりましたね。従来のように決まった場所に部下がいないですから。上司としては顔色を見ながら仕事をするのが当たり前という感覚だと思うんですが、それはお手盛りの昔ながらの文化。この制度では上司から積極的に行かないと難しい。もちろん人事制度を改革したり、管理ツールやメッセンジャーを入れて、都度コミュニケーションをとれるようにしたりしましたが、やはり積極的に動いてもらわないと。
上司からは部下が目の前にいたほうがいいのかもしれませんが、部下がそうとは限りません。フリーアドレス制は、部下のパフォーマンスをどうやったら最大限に発揮できるか。それがもっとも大事ですので。
それに付随して、パフォーマンスの数値化も現在進めています。人事制度に目標管理制度を導入しながら、すべて数値化してプロセスと結果をきちんと評価できる制度も作っていかなければならないと認識していますね。
また、フロアはオープンスペースなので、常に見られてるわけです。そうすると見られていることから来る仕事へのモチベーションアップにもつながりましたね。しかも造りを見てもらうことで、採用面においても効果的でした。
なにより当社は先の3事業が強い柱であり、個々の事業には確固たるものがあるんですが、例えば同じゴルファーに対しての考えが事業ごとにまったく違う目線で考えていたために、うまく連携をとれていなかった。ところがフリーアドレスでオープンにすることで人的交流が生まれ、結果として3つがコラボレートするようになったんです。
ゴルファーに対してよりよいゴルフの提案をしていくのが当社の使命でもありますから、自然にいろんな組織が組み合わされて、その結果、自然にコラボレートできるようなオフィスになったわけです」
フリーアドレス制を導入して、社員たちのモチベーションは上がった。しかし業績という数字にそれが反映されるまでには時間を要したようだ。
コラボレートできるオフィス。それが端的な数字となって表れたのは、導入後しばらくたってからだという。曽我氏は胸を張る。
「1年強してからハッキリと数字に表われはじめたんですよ。フリーアドレスは経費削減のためというのもありますが、そういった面よりもパフォーマンスを重視してましたから、それが1年たってやっと実を結びましたね。
今では誰かが入社するたびにレイアウト変更していたのもなくなりましたし、会議室が空いていないがために延期することもなくなりました。これだけ激しい時代の流れの中で、数十人でもすぐに受け入れられるオフィス体制です。百人規模の会社でも買ってきてもらってもかまいません。どうぞ買ってきてください。そんな冗談も経営陣からも上がってくるくらいですから」
もちろん移転をしたからそれで終わりではなく、常に「どうですか?」という意見を随時ヒアリングし、今後の運用に役立てています」
曽我氏はそう締めくくった。
新しさとはある意味、古さへの否定でもある。そして人は慣れしたしんだ感覚からなかなか脱却できない生き物だ。未知なるものは怖い。だが同時に、大きななにかを得ようとしたら、得ようとするぶん捨てなければならないのも、また事実。
慣れ親しんだ価値を捨て、それ以上の価値を創造する。
この至極難題なプロセスを一つずつ丹念に踏んだからこそ、GDOの今日の成功があるといえよう。
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