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» 2008年12月03日 09時33分 UPDATE

プロ講師に学ぶ、達人の技術を教えるためのトーク術:トークに「ブレーキ」をかける技を身につけよう (1/4)

「こんな面白い話なのに、もったいないよな……」。元ITエンジニアにして、「読解力・図解力」の研修講師である私は、あるセミナーを見学していました。そこで感じたことなのです――。

[開米瑞浩,ITmedia]

新連載開始のお知らせ(編集部より)

「新入社員がやってくる──専門知識を教える技術」「実践! 専門知識を教えてみよう」などの筆者、開米瑞浩さんの新連載「プロ講師に学ぶ、達人の技術を教えるためのトーク術」が始まります。客先、上司、後輩を相手に、ビジネスパーソンがトーク術を駆使する場面は多々あります。実践的なテクニックをご紹介する予定ですので、ぜひビジネスに役立ててください。


 2007年10月のある日のこと。元ITエンジニアにして、「読解力・図解力」を中心とするコミュニケーション系能力の研修講師として働いている私こと、開米瑞浩はその日、あるセミナーを見学していました。

 講師は以前からの知人である吉見範一さん。セミナーのテーマは、吉見さんの実体験を元にした「誰でもストレスなく売り続けられる営業術」というものでした。

シーン1:こんな面白い話なのに、もったいないよな……

 このセミナーが実に面白かったんですね。「足で稼げ」といった根性論ではなく、きちんと勝てる材料を用意してから売りに行こうという戦略的な営業論が実体験をもとに語られるので、非常に説得力があり、しかもエピソードが面白い。「これイイ!! いやこりゃあ面白いぞ!!」と私は何度もうなずきながら聞いていました。

 しかし、しかしです。不満がなかったと言えば嘘になります。いえ、不満というより、「もったいないな……」という気持ちです。

st_kai01.jpg

 「ストレスなく売り続けられる営業術」というコンテンツそのものは面白い。ただ、それを人に教えるための演出がともなっていないようだ。それができればもっとよくなるのに、もったいないな……。


 と、私はそう感じていたのです。

 人に教えるための演出。それは、単なる会話術ではありません。例えば会社の朝礼でのスピーチや営業場面でのトーク術とも違います。相手の知らない知識や技術を「教える」ためには、そのための特有の技術が存在するのです。それがあるとないとでは、受講生の「学習スピード」も「講座への満足度」も大きく違ってしまいます。

 ところが、多くの人がそのことを知りません。具体的にどんなポイントを押さえれば、「教えるための演出」が可能になるのか、そのノウハウを学ぶ機会はほとんどないため、いざ「教える」立場に立ったときには大変困ってしまいます。ちなみに教員免許を持っている知人約1名に聞いてみたところ、教育実習の時にもそんな指導を受けたことはないということでした。

 昔はそれでも問題はありませんでした。企業内教育といえばOJTが中心で、仕事は教室で教えてもらうというより現場で学ぶもの、先輩や親方のやりかたを見よう見まねでなぞりつつ、怒られながらいつの間にか成長している、という徒弟制度的やり方が通用する時代なら「教えるための演出」は必要ありませんでした。

 もっとも、実は私は「徒弟制度的人材育成システム」を高く評価している人間です。徒弟制度的システムの中でなければ学べないことは確かに存在するからです。かといって現代ではそのやり方が通用しない場面が多いという現実もわきまえています。社員教育のすべてを徒弟制度的スタイルでまかなうことは不可能なのです。つまり、きちんと教育体制を整備して実行しなければなりません。

 ではその「教育体制」とは、端的に言って何があればいいのでしょうか? もっとも単純な例を図1に書きましたのでご覧ください。

st_kai02.jpg

 「教育体制」は、簡単に言うと「教材」と「有能な講師」によって成り立ちます。「教材」を作るためには「整理された業務知識」と「教材としての構成手法」が、「有能な講師」には「豊富な業務経験とその自覚」「熱意」そして「講師としてのトーク術」が必要なのです。

 問題は、上記の図で網掛けした2つの箱A(構成手法)とB(トーク術)で、この2つが講師という「教える仕事」特有の技術なので、一般にはほとんど知られていない――ということなのです。実際、私の目の前でとても面白いセミナーを展開している吉見さんもそれを知らず、「もったいない」状態になってしまっていました。

 もったいない。実に実にもったいない。なんとかできないか? と考えた私は、吉見さんにある提案をもちかけました。

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