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» 2009年04月27日 15時10分 UPDATE

人を動かす話し方講座:「とくダネ!」の小倉さんに学ぶ――発言が活発になる議事進行術

会議の議事進行役をやるときに「参加者から意見を引き出すことができずに困っている」という人も多いでしょう。今回は、「沈黙が続くような会議」を「活発に発言が出るような会議」にするための議事進行術をご紹介します。

[水野浩志,Business Media 誠]

 プレゼンテーションや会議、朝礼など、複数の人前で話をする機会は意外とあるものです。しかし、多くの方が、人前で話をするということに苦手意識を持っている人が多いようです。

 今回は、そんな悩みを持つ人たちのために、誰にでもできる「大勢の人たちの気持ちを一瞬で自分に集める“つかみ”のテクニック」についてお話ししましょう。

「8時だョ! 全員集合」に見るつかみのヒント

 30代以降の方なら、「8時だョ! 全員集合」を知らない人はおそらくいないでしょう。1969年から1985年にかけて放送されたバラエティ番組です。ドリフターズの5人が中心となり、毎週ほとんど生放送で大がかりなコントを見せていましたね。最近ではDVDも発売されているので、若い方たちでご覧になったことがある人も多いでしょう。

 毎回生放送で、あれだけの大がかりなセットを組んでコントをやっていたのは、本当にすごいことだと思います。が、私がもっとすごいなあ、と思うのは、公民館などにお客さんを入れてやっていたということ。しかも、観客の多くが子供たちであったという点なんです。

 皆さんもご存じの通り、子供たちというのは非常に気まぐれで、注意力もありません。好き勝手に騒ぎだし、席に落ち着いて座っていられないような子供もたくさんいます。そんな注意力散漫な子供たちを、コントが始まった瞬間から舞台に釘付けにさせないといけないという、非常にハードルの高い環境の中で、あの番組は作られていたんですね。

 ですから、子供たちを飽きさせず、舞台に気持ちを向ける工夫が随所に盛り込まれていたのです。今思い返して私が特に素晴らしいと感じるのは、コントが始まる前に行ういかりや長介さんの秀逸なつかみの行動なのです。

テクニック:「あいさつ」をうまく使って聴衆をつかもう

 そもそも「つかみ」とはなんでしょうか。つかみの方法を知りたいという人は、つかみについてずいぶんと大層な何かをしなければいけないと誤解しているように思うのですが、要するに、

 「つかみとは、聴衆の意識のベクトルを自分に向ける

 ことなんですよね。人前で話す時、一番最初にこれをきちんとやっておけば、ずいぶん話を聞いてもらいやすくなります。

 では、どうすれば聴衆の意識のベクトルを自分に向けることが出来るのか。一番簡単で効果的な方法が「あいさつ」なんです。なんだそんなことか、と思うかもしれませんが、あまりに簡単なことゆえに、ほとんどの人たちがこのあいさつがずさんになっています。実はこのあいさつのやり方にもポイントがあるのです。

 では具体的にはどうしたらいいのか、いかりやさんのつかみのプロセスを見てみましょう。いかりやさんはまずコントの冒頭でステージに現れ、客席に向かって、

 「オース!!」

 とあいさつをします。すると客席から、

 「オース!!」

 と返事が。そこでさらに、

 「声が小さい! もういっちょ、オース!!」

 と呼びかけ。観客はさらに大声で、

 「オース!!」

 と返します。それを受けていかりやさんは

 「よーし!!」

 と返答します。このやりとりで、観客全員を、一気にステージに集中させているんですよね。

 さてこのあいさつ、分析すると3つのポイントがあります。1つ目は、

 「相手が返事を返せるあいさつ言葉を使っている

 ということ。私はこれまでにたくさんのスピーチを見てきましたが、たとえ冒頭にあいさつをする人でも、「どうも」とか「よろしくお願いします」「始めさせて頂きます」といったように、相手が返事を返してくれるようなあいさつ言葉を使っていない場合が多くありました。

 あいさつとは、お互いが交わし合うものです。ですから、一方通行になってしまう言葉を使ってしまうと、それはあいさつにはならないんです。かといって、ビジネスシーンで「オース!!」という訳にはいきませんよね。

 という事で、私は、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」の3つをあいさつ言葉として推奨しています。どれも基本的なあいさつ言葉ですが、基本的であるからこそ、このあいさつをすれば日本人ならほとんど無意識で同じあいさつを返そうとするでしょう。こうして、聴衆の意識のベクトルがあなたに向くのです。

マインド:一方的な情報伝達ではなく、コミュニケーションである

2つめのポイントは、

 「自分があいさつをした後、相手のあいさつをきちんと受ける間をとる

 ということ。スピーチの冒頭でせっかくきちんとあいさつをしていても、「おはようございます水野ですでは始めさせて頂きます」といった感じで、「相手からの返答」を待たないで話し始めてしまう人が非常に多いのです。これでは、せっかく聴衆があいさつを返そうとしても返すことが出来ません。

 確かに、こちらがあいさつを呼びかけても、聴衆が口に出してあいさつに応えてくれるとは限りません。しかし心の中では、あいさつを返そうという気持ちには必ずなるものです。そんなときに、そのあいさつを待たずにしゃべり続けてしまうと、聴衆は「こちらの気持ちが無視された」という気持ちになります。そうなると、話を聞こうという気が薄れてしまうんですよね。

 ですから、こちらからあいさつ言葉をかけたら間をおいて、聴衆からのあいさつを受け取るという事が非常に重要になるわけです。

 さらに3つめのポイントは、

 「聴衆から返ってきたあいさつを受け止めたという意思表示をする

 という事。具体的には「アイコンタクトを取り、会釈またはお礼の言葉を返す」という事を行います。

 アイコンタクトを取るためには、あいさつの時に深々と頭を下げず、「目線を聴衆に向けたまま軽く会釈をする」程度にとどめます。その状態であいさつをすると、たいていの場合、聴衆の視線は自分に集まります。そのときにしっかりアイコンタクトを取りながら会釈をしておくと、相手が自分に意識を向けてくれたことを受け止めましたよ、という意思をスムーズに伝えられるでしょう。

 また、そのときに言葉であいさつを返してくれるケースもあるでしょう。そんなときは軽く「ありがとうございます」と言葉で返しておくのも、相手のあいさつを受け止めたことを意思表示する非常に有効な方法です。

 これをきちんと行うことによって、聴衆は自分が話し手に受け入れられた、という事を具体的に認識し、意識のベクトルを話し手にしっかりと設定し、これから話すことをきちんと聞こうという心の準備ができる、というわけです。

 以上挙げた3つのポイントの1つ1つは、誰でもできる簡単なことばかりです。しかしこれをやるとやらないとでは、聞き手の気持ちが大きく変わってくるのです。

 不思議なことに、1対1で話をするときはきちんとコミュニケーションができる人も、人前で話すときには、ついつい一方的な情報伝達のスタイルを取ってしまう人が多いようです。

 しかし、1対多の状況で話すときでも、基本的にはコミュニケーションを行っているんですよね。だから、自分と聴衆とで気持ちのやりとりをする必要があるのです。そして、その意思表示をする一番簡単で、一番効果がある方法が、今回お話ししたあいさつのプロセスなんです。

 ということで、(1)あいさつ言葉に気をつけ、(2)聴衆からのあいさつを受け取り、(3)受け止めた意思表示をする、という「一往復半のコミュニケーション」を行い、自分の話をしっかり聞いてもらえる状態を作ることを、ぜひ心がけてください。

 なぜなら、あいさつとはコミュニケーションの第一歩なのですから。

著者紹介 水野浩志(みずの・ひろし)

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 マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップやモチベーション創造、自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や講師としてのマインド、人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。


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