エアコンをつけずに涼しく過ごす方法節電DIY(2/3 ページ)

» 2011年08月18日 18時30分 公開
[奥川浩彦,Business Media 誠]

バルコニーの“石焼きビビンバ”状態を解決する

 さて、南側のバルコニーは部屋に日差しが差し込むことはないが、2010年の経験では8月、9月の気温の高い日は、バルコニーの外壁面や床面はかなりの熱さになり夜になっても“蓄熱”状態が続いていた。筆者宅の太陽の角度を調べてみると

太陽の角度
6月15日 約78度
7月15日 約76.5
8月15日 約69度
9月15日 約58度
バルコニーの側面図。8月、9月は日差しが入り熱くなる

 側面図を見ると太陽の角度が低くなる8月後半から9月は直射日光の当たる面積が大幅に増えることが分かる。日差しの強さはよく分からないが、外壁面の上面に触ると「熱い」と感じるほどで、バルコニー全体が深夜まで“石焼きビビンバ”状態となる。

 2010年は夕方に打ち水をして冷却したが、すぐに乾いてしまい、一度で冷やすことができなかったので、2011年は新たな施策を行うことにした。外壁は内側にシーツを貼り保水能力を高めることで水冷の効率をよくする。床面にはカーペットを敷き、こちらも保水能力を高める。カーペット自体が床面の蓄熱を抑える効果も期待できる。ちなみに打ち水に使用する水は、シャワーの湯温が上がる前の捨て水をバケツに溜め、翌日の打ち水に使用している。

シーツの片側は物干し用の金具に挟み込んで固定
もう一方はシーツに穴を開けた
物干し用の金具を被せて固定
こんな形でシーツを外壁面の内側に取り付けた
打ち水をすると壁面に貼り付く
床面には90センチ×350センチのカーペットを敷いた
カーペットは打ち水するとたっぷり水を含んでくれる

 ホームセンターでは、床面に敷く反射シートも売られているが、床面の温度は下がる反面、反射した太陽光が部屋に入り室内の温度が上昇する懸念があり検討外とした。

 8月に入り徐々にバルコニーの外壁の温度も高くなってきたので、数日間、バルコニーの壁面、床面などの温度を計ってみた。当たり前だが直射日光が当たる部分はかなり温度が高くなる。特に外壁の上面は熱く、60度近くまで上がることがある。日中は外壁の上面、外側面、バルコニーの床面の温度が上昇する。外壁の内側面は日が当たらないので、それほど熱くはならない。

 日が当たらなくなると、外壁も床もコンクリートでつながっているので徐々に同じ温度に近付いていく。その温度は気温より高めで、気温が下がると徐々に壁面、床面の温度も下がっていく。深夜になると風が当たるせいか、外壁は外側面の方が早く温度が下がり、内側面の方がジンワリと暖かさが残る感じだ。

打ち水って効くの?

 実際に打ち水をして検証してみよう。まずは外壁の内側。シーツを濡らして水冷する部分と少し離れた部分に温度計を貼り付けシーツに打ち水をした。スタート時点の温度は水冷する壁面部分が38.1度、離れた壁面は36.9度、気温は35.4度。打ち水により14分後に外壁内側は32.5度まで5.6度下がった。

壁面に温度センサーを取り付けた。右側がシーツの下になる
外壁面の水冷

 濡らしたシーツは20分くらいで、脱水機で絞った程度まで乾き、温度はゆるやかに上昇した。ここで再び打ち水、さらに20分後、40分後、60分後と5回打ち水を行った。

 2度目以降の打ち水は少し温度が下がる程度だった。5度目(最後)の打ち水から十数分すると温度は徐々に上昇。逆に少し離れた外壁の温度は、このころやっと熱が伝わったと思われ急速に温度が下がり始めた。打ち水を継続すれば低い温度を維持できそうだが、現実的には面倒臭い。手で触るとこの時点では濡らしたシーツの下の壁面はそこそこ冷えているが、反対側の外側の面は熱いまま。それなりの効果は見られるが、シーツを濡らした程度の水では外壁に蓄熱した熱を完全に冷やすほどの効果はないようだ。効果を維持するには継続して水を供給する仕組みが必要だと思われる。

 次は床面のカーペットと壁面のシーツに同時に打ち水を行ってみた。今回は打ち水は最初の1回だけ実施。日差しが当たらなくなった15時半に打ち水を行い、温度変化の大きい最初の2時間は動画撮影、その後は1時間ごとの温度を深夜2時半まで11時間記録した。

温度センサーを床面に移動して測定

 最初の2時間のグラフを見てみよう。赤い線の床面の温度が少し遅れて下がるのは、筆者がシーツを濡らし、カーペットを濡らし終わるまでに4分ほど掛かったためだ。シーツへの給水は約1.5リットルだが、流れ落ちる水がそこそこあるので1リットルくらいを保水できたのではないだろうか。これに対しカーペットは10リットル以上の水を含むことができる。シーツは1時間ほどで完全に乾燥するが、カーペットは計測終了の2時半になってもうっすら濡れていた。

最初の2時間の温度変化

 壁温度(青線)も床温度(赤線)も同じような角度で下がっていくが、壁温度は13分後に32.9度まで下がり16分以降やや上昇するがその後は50分くらいまで安定状態を続けた。このころにはシーツはほぼ乾燥状態。そこから壁温度は上昇し1時間を過ぎたころには35度弱で安定状態となった。

 床温度は最初の15分くらいは急激に下がり、その後もゆるやかに降下。打ち水から50分ほどで31度くらいで安定状態となった。

 次は深夜2時半までの全体のグラフを見てみよう。最初の2時間は20分ごとのプロット、以降は1時間ごととなっている。2時間経過し壁温度(青線)は気温(緑線)と平行にゆるやかに降下していく。一方の床温度(赤線)も2時間以降はゆるやかに降下し、常に気温より低い温度で推移した。

11時間の温度変化

 筆者の推定では、シーツに打ち水をしなければ、壁温度は青い点線のように推移したと思われる。点線より下がっている分が1回の打ち水の効果だ。床温度の赤い線も、打ち水をしなければ最初の2時間は青い点線、以降は青い実線に沿って推移した可能性が高く、スタート時点で4〜5度、夜間でも2〜3度の冷却効果があったと思われる。

 同様に気温も最初の2時間はシーツ、カーペットの打ち水効果がなければ緑の点線で推移した可能性が高く1度程度の冷却効果があったような気がする。グラフからは読み取れないが、もし壁温度、床温度が青点線→青実線で推移していたら、気温は全体にもう少し高い温度になっていたかもしれない。

 シーツへの給水方法など改良の余地があるが、なんとなく打ち水の効果はありそうだ。何度も検証をした結果、シーツは夕方は1時間で乾燥するが、夜遅くになると2時間程度は濡れている。夕方に打ち水、1時間後にもう1回、さらに2時間後に打ち水をすればそこそこ低い温度が維持できそうだ。何度も打ち水をするのは面倒なので、大型のペットボトルと細いホースを応用した給水システムがあれば楽に温度が下げられるかもしれない。

 夜間もエアコンを使用している方は関係なさそうだが、外気+扇風機という方は打ち水をすると少し気温を下げることができそうだ。カーペットは敷くだけだし、打ち水も1回の作業で朝まで持つので、バルコニーが“石焼きビビンバ”になっている人は参考にしていただきたい。

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