個人事業主が語る、独立する人が知っておくべき会計経理大増税時代(1/3 ページ)

独立、開業をする人は何かしらの専門知識を持っている場合が多い。一方で「経理や税金は全然分からない」という人も多いはずだ。本記事を読めばそうとは言えなくなるはずだ。

» 2012年02月28日 16時00分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

 今回は独立(起業)と税金について考えてみたい。読者の中には2011年に独立をして今まさに確定申告に直面している人、これから独立を考えている人、いつかは独立したいと思っている人、ずっとサラリーマンでいると思っている人など、さまざまな人がいるだろう。起業、独立との距離感に違いはあると思うが、税金関係の知識はある程度は知っておいて損はないはずだ。

 前にも書いたが、筆者は23年間のサラリーマン生活から脱落し2006年の年末に独立した。2006年の春には独立することなど考えていなかったが、その後数カ月で状況は変わり、11月に退職。12月に開業した。独立が具体的になったときに不安を感じたのは、経理の知識がまったくないことだった。

 独立を考えている人は何かしらの専門分野を持つ人が多いはず。プログラマーやデザイナー、カメラマンといった手に職を持っている人や、飲食店、輸入販売に挑戦する人。得意分野で独立する場合、その分野に関しては詳しくても経理などに疎いことが、微妙に独立の精神的障壁になっていたりする。

 仮に素晴らしい製品やサービスを作っても、宣伝力、営業力(流通開拓)などが劣っていれば事業は成功しない。経理会計もその1つで、この部分が欠如していると倒産の危機に直面する重要な項目だ。細かなことを考えれば、技術は優れていてもデザインが劣るケースや、アイデアはよくても品質やアフターサービスが不足しているなど。事業の成否を分けるポイントは多々ある。全てが完璧とは行かないが、致命的な欠点があると事業存続に影響する可能性が高い。

 ……などと偉そうなことを書いているが、筆者自身が独立してから税金の勉強を始めた口なので、開業から6年目に入ったことは今思えばラッキーだったと言えよう。一説によると独立して1年以内に廃業するケースは30%とも40%ともいわれ、3年以内で70%、10年以内で93%らしい。この数字を見て筆者自身「運が良かった」と胸をなで下ろしている。

個人事業主の4割は1年で廃業の事実

 廃業に関して中小企業庁で見つけたデータをグラフにしてみた。データは中小企業庁が経済産業省「工業統計表」から製造業で従業者4人以上の事業所の開業後経過年数ごとに、前年を100として次年に存続している事業所の割合を再集計している。集計期間は1984年から2002年。

 グラフは開業からの年数ごとに前年比の生存率を表している。開業から1年で62〜80%の事業所が生き残り、生き残った事業所の75〜88%は2年目も生き残るということだ。グラフの青線は法人、赤線は個人事業となっている。法人と個人事業を比べると法人の方が廃業になる比率が少ない。だが、どちらも最初の数年、事業が軌道に乗るまでが厳しい。グラフだけ見て個人事業主で開業するより1人株式会社で法人にした方が安全だと考えるのは疑問だ。

 数値だけでは細かな実情は分からないが、法人には企業の子会社のようにスタート時点で体制が整っているケースや、数年は赤字でもバックアップを受けられるケースなど廃業する率が低い可能性もある。そもそも元データが従業員4人以上の製造業となっているので、脱サラで飲食業を開業とかカリスマ美容師の独立といったケースはデータに含まれていない。

個人事業主の生存率は法人の半分以下!?

 細かく見ると個人事業では開業1年後の生存率は62.3%、約3分の1は1年持たずに廃業していることになる。翌年もその4分の1が廃業、さらに翌年は5分の1が廃業している。この数字から年数ごとの残存率をグラフにしてみた。

 開業3年で生き残れるのは法人で約63%、個人ではわずか38%だ。6年後には法人でも半分、個人はたった2割しか残らない計算になる。この数字を先に知っていたら筆者は独立したのかと自問自答、製造業ではないが5年目の残存率26%の中に残れたことを感謝するだけだ。

 これらの数字を見ると独立、開業するなら「経理や税金なんて全然分からない」とは言っていられないだろう。実際に筆者の周りにも請求書を送ってと依頼しても送ってこない人もいるし(なくても振り込むが)、入金のたびに源泉徴収をされたりされなかったりする企業もある。毎月の領収書を税理士に送るだけという社長さんもいる。お金がザクザクあっての起業なら経理担当を雇うとか税理士にお願いする方法もあるが、何も知らずに言い値で丸投げするよりは、ある程度の知識があって依頼する方がコスト面でも安全面でも間違いはないだろう。

インフレ時代の確定申告
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