経費を“増やす”方法――個人事業主向けの節税対策を考える「大増税」時代に備えて(1/6 ページ)

前回まではサラリーマンの人に向けて年末調整の書き方を紹介したが、今回は個人事業主として独立したばかりの人、あるいは近いうちに独立を考えている人に向けて節税方法を紹介したい。ポイントは経費を増やすことだ。

» 2012年12月05日 11時00分 公開

 前回まではサラリーマンの人に向けて年末調整の書き方を紹介したが、今回は個人事業主として独立したばかりの人、あるいは近いうちに独立を考えている人に向けて節税方法を紹介したい。

 筆者は2006年11月にサラリーマンを卒業(脱落?)し、12月に個人事業主として独立。それまで税金の知識は皆無だったので、年が明けた2007年1月に「やよいの青色申告07」を購入、税金関係の書籍も数冊買って2月に始まる確定申告の準備を始めた。

 経費、課税所得、税率と少しずつ税金のことを理解すると、どうしたら納税額が減るのかが見えてくる。そして重大なことに気付く。時すでに遅し――。節税は年が明けてからでは遅い。あの領収書がない、あれを買って経費にすればよかった、小規模企業共済ってスゲー節税効果……と後悔したのは1月の下旬だった。

 と言うことで、開業したばかりの人、この先開業を考えている人が筆者のように後悔しないように、個人事業主の税金の仕組みと節税方法を紹介していこう。

個人事業主の税金の仕組み

 どうすれば節税ができるかを知るために、まずは個人事業主の税金の計算方法から確認してみよう。個人事業主の所得税は以下の式で計算される。

  • 売り上げ−経費=所得
  • 所得−各種所得控除=課税所得
  • 課税所得×税率=所得税

 この連載を最初から読まれた読者は何となく見覚えのある式と思われただろうか。サラリーマンの所得税の式と見比べていただきたい。

  • 給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
  • 給与所得−各種所得控除=課税所得
  • 課税所得×税率=所得税

 サラリーマンは給与として収入を得る。個人事業主は業種により形態はさまざまだが、仕事の対価として売り上げを得る。サラリーマンの給与所得控除は一定の式で計算された控除(ある意味架空の経費)だが、個人事業主の経費は実際に事業をするために支払った、仕入れ、交通費、家賃、光熱費、通信費――といった経費を合計したものとなる。

 2行目、3行目の式は基本的に同じ。2行目の各種所得控除は基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などとなり、3行目の税率もサラリーマンと差異はない。

 どうすれば納税額が少なく(節税)できるかは、式が単純なので答えも簡単だ。3行目の式の所得税(納税額)を減らすには課税所得を減らせばいい。2行目の式にさかのぼって課税所得を減らすには所得を減らし各種所得控除を増やせばいい。各種所得控除を増やす方法はサラリーマンの節税とほぼ同じだが、個人事業主ならではの控除もある。

 1行目の式の所得を減らすには、売り上げを減らすか、経費を増やせばいい。売り上げを減らすのは特別な場合以外は本末転倒となるので、経費を増やすのが節税への近道となる。整理すると以下の2つができれば納税額を減らすことができる。

  • 経費を増やす
  • 各種所得控除を増やす
経費と控除を増やせば納税額は減る

節税、その前に

 節税のための1つ目の方法は経費を増やすことだが、その前にやることがある。収支の確認だ。もうかっていないのに経費を増やすのは論外。まずはどれくらいもうかっているかを確認しよう。

 経理のやり方は業種によるところもあるが、本人の性格によるところも大きいと筆者は思っている。日々お金の出入りがある小売業の場合は、こまめに集計していると想像できる。一方、1年分をまとめて集計するズボラな人もいるだろう。筆者はまさにそのタイプだ。

 参考にしてほしくないが、筆者のやり方を簡単に紹介しよう。筆者のお仕事は広報コンサルタントやライター。なので、広報をお手伝いしているメーカーや原稿を書いた出版社に対して、月末に請求書を出し、翌月振り込まれた売り上げを月単位で確認している。経費は11月くらいに1月から溜め込んだ領収書、銀行引き落としなどをまとめて入力する。

 11月になれば12月までの売り上げ、経費はおおよそ確定するので、控除なども計算しこの段階で所得、課税所得、納税額(所得税、住民税)は推計できる。もうかっていれば12月に業務に必要なものを購入し節税をする。2月、3月の確定申告の時期に11月、12月分の売り上げ、経費などを入力し1年間の決算が完了する。

 独立したてのころはもう少し細かく集計作業をした記憶がある。しかし独立して6年も経つと売り上げを集計すればおおよそのもうかり具合は想像できるので、ここ最近はこのような典型的な“ズボラ方式”となっている。

インフレ時代の確定申告
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