そういえばこんな話を聞いたことがある。今では30代のベテランになっているエンジニアKさんの新人時代の出来事だ。
数カ月の新入社員研修を終えて、いよいよ配属という朝、配属先の職場で真っ先に課長の席にあいさつに行った。
「本日からこの部署に配属になった○○です。1日も早く一人前になり貢献したいと思います。よろしくお願いします」と言うと、課長は「おお、○○さん。待っていましたよ。3年目の××さんから今後のスケジュールなど教えてもらってください」と笑顔で迎えてくれた。
与えられた自席につき、仕事の準備を始めると、耳に飛び込んできた言葉に驚いた。
「ああ、オレ、転職してえなあ〜」。声の主のほうを見ると、先ほどあいさつした課長ではないか。課長が椅子に座ったままのけ反って天を仰ぎ、ため息まじりにそう言っていたのだそうだ。
Kさんは「ああ、なんてことだ。とんでもない部署に来たかもしれない」と配属初日から衝撃を受けた。
30代となり、新入社員のOJT担当に任命された彼は、10年以上前の自分の経験を思い出し「ため息とかネガティブな発言を部下や後輩に聞かせるものではないなあ」と改めて自戒したそうだ。
発言している当人には悪気がなく、言葉で言うほどネガティブな気持ちを持っているわけではなくとも、耳にする側が若手の場合、意図せずインパクトを与えてしまうことがある。
部下や後輩という立場にいると「ため息はやめてほしい」「ネガティブな発言をしないで欲しい」なんてなかなか言えるものではない。聞こえてきても、上司や先輩の前ではニコニコと応じるしかないだろう。
上司や先輩というのは、自分が考える以上に発言にパワーを持ってしまう。部下や後輩の前でため息をついたり、ネガティブな発言をしたりしないよう、気を付けなければならないのだ。
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