コンサバ系ファッションがお気に入りの依存ちゃんですが、アシスタントとして絡むことの多い出木杉くんは、毎朝彼女のファッションチェックを欠かしません。
別に依存ちゃんが女性として気になっているとか、ファッションセンスを高く評価しているわけではなく、あくまで自分のため。新しいスーツやブラウスを下ろしていないか、季節を先取りしていないか。さらに、色味の明るさやヒールの高さはどうか、美容院に行った形跡はあるか。普段パンツメインなのにスカートをはいているなどは、格好の指標になります。
そう、今晩依存ちゃんにデートが控えているかどうかをあらかじめ読みとろうとしているのです。
依存ちゃんは、はっきりと仕事よりも恋愛が優先、大切なデートの日に残業することはありえないという考えの持ち主です。調べれば分かることを何でも人に聞いてしまうのは、彼氏が優しいからかもしれません。
出木杉くんはこれまで、何度かここぞというポイントでメイクをし直し、普段は付けていない香水をちょっと多めにまとった依存ちゃんに、笑顔でトンズラされた痛い経験があるのです。
そこで出木杉くんは、過去のデータ分析から今晩依存ちゃんがデートの可能性が強いと判断すると、彼女に頼みたい仕事を、実際に掛かる時間に1時間を加えたタイミング、つまり、2時間を要するだろう仕事で、6時が定時の退社時刻であれば3時前までに、依存ちゃんに処理するように言い含めます。
「これ、5時までに頼める?」と、早めにパスを出すのです。
これには2つの効果があります。
いかに依存ちゃんがデート優先でも、仕事そのものを拒否しているわけではありません。デートに出掛ける前に完璧に「納品」できそうな仕事であれば、すっきりして出かけたほうがいいというインセンティブが働きます。その結果、いつもよりスピードもクオリティも伴った処理が期待できるのです。
もう1つは、デートではないときには協力してくれるようになることです。自分がデートに行くことを暗黙のうちに許してくれることが伝わりますから、そうでないときには多少の無理を聞いてくれるようになるわけです
何か必要なものがあると、他人の机からヒョイッと拝借してしまう人。あるいは「ちょっと貸して」と正当な手続きを踏みながら、用を終えても返してくれない人。つまり、コソドロ。
彼らの多くは悪意があるわけではありません。道具を拝借し、用を足したら返さなければいけないことを忘れやすいだけです。中には、すべての文房具類は会社の予算で買ったものだから、別に誰が使っても構わないじゃないかという乱暴な理屈をこねる人もいないわけではありません。
困るのは、盗られたといってもお金や高額な電気機器ではなく100円のペンだったり、500円の定規だったり、高くてもせいぜい1000〜2000円程度のものであること。さらに、会社支給品であれば見た目は誰のものか証明できませんから、あまり大きな声で返却を催促するのも気が引けます。「コソドロ」へのもっともシンプルな対策は、自分の使っている道具を「個性的」にすることです。
僕は本来、できるだけ皆さんに道具にこだわってほしいと思っています。こだわりの道具は明らかに会社の支給品とは違いますから、誰のものかはっきりします。僕は、自分の仕事が道具にこだわれる職種だったことを、とてもうれしく思います。それはつまり、自分がどういう仕事をするのか、するべきなのかということの判断が、究極的には自分に任されているからです。
一流のすし職人は、必ず自分の包丁を持ちます。
イチローは、チームから支給されたバットを使うでしょうか。
そんなはずはありません。こだわり、選び抜いたバットを使っているはずです。僕も、そうありたい、と思います。そしてこれは、結果的にコソドロ対策にもなるのです。
たとえ支給品であっても、マスキングテープやステッカー、シールなどで個性をつけると、オリジナリティが加わって、「コソドロ」が手を出しづらくなります。もともと誰に所属していたのかが分かりやすくなりますから、安易には盗めなくなるのです。これはビニール傘などにも応用できます。
そして、毎日使わない文具は、引き出しの上段に入れてしまうことです。目の前がすっきりしますし、さすがに引き出しをわざわざ開けて盗む人は少数派です。これでは本当の泥棒になってしまいます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.