この話をお聞きしてから、思い出したことがある。ずーっと前の上司のことだが、所属部門の定例会の中で、こんな説明をしたことがあった。
「来月から、××と□□を手掛けることになったので、皆さんもそれに向けて準備してください」
私たち部下は「なぜこのタイミングで××や□□をするのだろう?」と疑問に思ったので、質問した。
「どういういきさつで、何を目的としてその2つを来月からすることになったのですか? 決まったということであれば、もちろん全力で取り組みますが、疑問に思ったので教えてください」
すると、上司はこう言った。
「ウエが決めたことだから、自分もよく分からないんだけど、するって決まった限りはしないわけいかないでしょう」
これを聞いて、部下たちの間にはどよ〜んとした空気が流れた。
「ウエが決めたことだから」も先ほどの人事考課の例と同じで、「自分の力の及ばないところで決まったことだから仕方ない。私は悪くないからね」と言っているようなものである。
これを聞いて部下のやる気が高まるはずがない。
中間管理職がこんな風な表現を使いたくなる気持ちも分からなくはない。上からはアレコレと厳しい注文が降ってくるし、自分も納得がいかないこともその中には含まれる。部下にそれを伝えると、今度は部下がオモシロくなさそうな顔をしたり、やる気がなさそうなそぶりを見せたりする。間に挟まる自分の精神状態にもよろしくない。
だから、つい、「私もいいとは思っていないんだけど……」という表現で部下に伝えてしまうのではないだろうか。
でも、そういう言い方をしていると、部下はより一層やる気をなくすばかりか、上司への信頼をなくすことにもなりかねない。
たとえどんなに厳しい状況でも、マネージャーは「自分の言葉」で語るべきなのである。
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