一般的に、メーカー(製造業)より商社や金融機関のほうが給料は高い、と言えます。
「メーカーは設備投資や研究開発があるから、給料が安いんだよ」ということを理由として挙げる人もいますね。それは正しい指摘です。
ただ、もしかしたら考えている根拠は間違っているかもしれません。もし「設備投資や研究開発にお金を使わなければいけないから、社員の給料が安い」という意味で言っていたら「間違い」です。
もっともらしく聞こえるので納得してしまうかもしれませんが「設備投資をしなきゃいけないから、社員の給料が少ない」ということは、「あなたの給料を減らして、設備投資に回しますね」と言っているのと同じです。
そんな理屈を言われて、だれが納得できるでしょうか? そんな理屈が通るはずがないのです。
メーカーよりも商社のほうが高いのは別の理由です。それは、メーカーでは設備や研究開発が「労働者が明日も仕事をするために必要なもの」だから、です。
メーカーの仕事は、直接的にであれ間接的にであれ、工場を利用しています。工場勤務の人は、工場がなければもちろん労働ができません。商品企画の人も、工場がなければ企画した商品を製造できないので、結果的に仕事になりません。つまり、メーカーで働く労働者が明日も仕事をするためには、工場の存在が不可欠なのです。
労働力の価値は、「その仕事をするために必要なもの」と説明しました。食費や住居費、娯楽費などは、労働者本人が使うお金なので給料として支払われます。でも、設備や研究開発を労働者1人1人が行うわけではありません。当たり前ですが、会社がまとめて用意します。そしてその分は、労働者には支払われないのです。工場を建てるためのお金を貸してくれた銀行や投資家に払われます。
一方で、商社の労働は、設備や研究開発ではなく、商取引。この仕事は基本的には、労働者自身の知力・体力がそろえばできます。だからその分、メーカーに比べて給料が高いのです。
給料の金額がどのように決まっているか自体、明確に言える人が少なく暗黙的に従っているルールに則っているだけです。そのため、各業種での違いも「何となく」で考えていますが、このように考えれば整理がつきます。
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