日本人の気遣いは海外では感動のサービスです。例えば、会議のあとに椅子を収めることは日本では当たり前ですが、海外ではこれは清掃員の仕事だという感覚があります。
また、かつて日本のマクドナルドには「スマイル0円」とメニューに載っていました。米国のマクドナルドでこれをメニューに載せるのが不可能なのは、現地に旅行に行けばすぐに分かります。おもてなしの心を求められる仕事は、日本人が優位です。
日本は村社会です。村八分という言葉からも分かるようにコミュニティやチームワークなしでは生きていけません。私が小さいころには、祖母は家に鍵をほとんどかけませんでした。地域で防犯の体制が自然とできており、施錠の必要がなかったのです。
日々の生活を通じて身につけたチームワークは、東日本大震災のときにも世界から絶賛されました。また、渋谷のスクランブル交差点であれだけの人が一度に移動してもぶつからないことは、外国人が観光スポットとしてガイド本に掲載するほどの奇跡なのです。集団としての成果を求められる仕事では、やはり日本人が優位です。
人間は変化が基本的に嫌いで、それは日本人も同じです。しかし、日本には四季があり、その変化に合わせて生きていかねばなりません。例えば、着る服も春夏秋冬と4回も変えるのです。頻繁に変わる環境に合わせて生活することを意識せずに日常的にやっているので、変化への対応能力が高くなっています。また、戦前はアルファベッド禁止と言われればそれに合わせ、終戦後はその激変した環境に合わせるだけでなく高度成長を実現できたのは、やはり対応力の高さゆえです。変化への適応が求められる仕事では日本人優位です。
小さな家に住んでいることが日本人プレミアムだと言われると異和感があるかもしれませんが、国土が狭いのも見方を変えれば大きな強みです。箱庭、弁当、軽自動車などスペース制限の中で工夫する力は日本人の強みです。また家電製品でも米国製と日本製の冷蔵庫を比べれば差は一目瞭然です。小さくてエコな商品づくりや小さくても多様性や美しさを表現することは、常に制約条件の中で生きてきた日本人が得意なことです。小型化などの制約の中で工夫を求められる仕事では日本人優位です。
中国人がよく口にする言葉に「差不多(チャァ・ブ・ドゥォ)」という言葉があるそうです。意味は「だいたい同じ」。この「だいたい同じ」という感覚は、国民性の違いからか日本人の感覚とは大差があります。食は文化の基本の1つですが、中華鍋を大胆に振って中華料理をつくっている中国人の姿と、包丁を巧みに使いこなし日本料理をつくる和の鉄人の姿を想像してみると分かりやすいかもしれません。京料理などの繊細な日本料理職人や美容師などでは日本人に1日の長がありそうです。前回紹介した美容師の例にも言えますが、細部へのこだわりが大きな価値を生む仕事では日本人優位です。
以上、日本人ならではの強みを5つ紹介しました。日本で生活する日本人には、これらは当たり前で意識することもなく、日本人同士の間では差別化にはなりません。しかし、海外に出た場合、これらの強みを意識できると自分の評価が上がったり、他人には簡単にはマネできないビジネスのチャンスになり得ます。今一度自分の日本人としての強みを認識しておきましょう。日本人として日本で長く過ごしてきたからこそ身についた日本人プレミアムは、立派なプチスキルなのです。
「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」
古くから日本でも読まれ続けている孫子の言葉どおり、日本人の強みを生かして「戦わないで済む仕事」をまずは選ぶのがスジがよいと言えるでしょう。
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