人間関係を制するものは営業を制す――リコーが説く“名刺デジタル管理”3つのメリット(1/2 ページ)

作業効率の向上だけでなく、売上アップにつながる名刺データの活用を――。リコージャパンのMA事業本部が「ワークスタイル変革」の一環として始めた名刺管理のデジタル化と社内共有は、どんな効果を上げているのか。

» 2014年06月10日 11時00分 公開
[柴田克己Business Media 誠]
Photo リコージャパンのプロセス革新部営業革新グループ マネージャーの長島義弘氏

 社会環境やライフスタイルが大きく変わり始めている昨今、“働き方を変えていこう”という気運が高まっている。中でもとりわけ関心が高いのが「時間や場所に縛られず、効率よく仕事ができる環境を作る」こと。これは会社と社員の双方が注目しているテーマだ。

 こうした「ワークスタイルの変革」を社内で実践し、そこから得られたノウハウを顧客に提供してるのがOA機器販売大手のリコージャパンだ。同社のMA事業本部はその一環として、名刺のデジタル化と社内共有に積極的に取り組んでいる。

 「名刺管理のデジタル化は、営業担当者の利便性を高めるだけでなく、会社全体の利益拡大につながる潜在的な可能性を秘めている」――こう話すのは、リコージャパンでMA事業本部プロセス革新部営業革新グループマネージャーを務める長島義弘氏だ。

 同事業本部のワークスタイル変革において「名刺管理のデジタル化」はどのような意味を持っているのか。また、どんなメリットを生んでいるのかについて、同氏に話を聞いた。

執務スペースの削減で「名刺管理」が課題に

 MA事業本部が、ワークスタイル変革への取り組みを本格的に検討し始めたのは、2011年の東日本大震災がきっかけだったという。地震や津波による直接的な被害が少なかった場所でも、交通機関の麻痺や電力不足といった問題が起き、“こうした状況下で、どのように企業活動を継続していくべきか”という課題が突きつけられた。同部門でも、社員の働き方を変えていく必要性を強く認識したという。

 幅広く「新しい働き方」について検討する中で、特に変革の余地が大きかったのが営業担当者のワークスタイルだ。

 「営業担当者は、企業がお客さまとの関係を作っていく上で重要な役割を担っています。しかし、調べていく中で、その最も重要な活動、つまり顧客と会うための時間が減っていることが分かってきたのです。営業担当者が、質の高い仕事を効率的に進められるよう、MA事業本部では“直行・直帰”を基本にした営業スタイルを推進することになり、そのための環境を整え始めました」(長島氏)

 顧客に会う時間を増やすためには、それ以外の時間、特に営業担当者が自宅と会社、会社と顧客との間を移動する時間を削減したい――。「直行・直帰」を基本とした勤務スタイルは、そのための施策だ。同事業部はさらに、担当者の勤務パターンを調べた上で、当該営業部門の居室スペースを削減。同時に、都内4カ所(東京、渋谷、虎ノ門、品川)にサテライトオフィスを設けて、外出中の担当者がちょっとしたミーティングや作業をする場合に、自由に使えるようにした。

Photo リコージャパンの営業担当者は、外出中に最寄りのサテライトオフィスで業務をこなせる

 こうした環境を作ることで、営業担当者はサテライトオフィスを利用しながら効率的な営業活動が可能になり、執務スペースの削減を実現できたわけだが、1つ大きな課題が見えてきた。それは、「名刺をどのように管理していくか」ということだった。

 「執務スペースの削減にともない、個人が利用するロッカーのスペースも少なくなったのですが、そこで浮上したのが、営業担当者それぞれが所有している“紙の名刺”をどう管理したらいいか――という問題でした。営業担当者は大量の名刺を保管しており、ロッカースペースに入り切らないほどの名刺を管理している人も多い。この大量の名刺すべてを大きなファイルケースに入れて常に持ち歩くのは、とても現実的ではありません。そこで改めて、名刺管理のデジタル化に本格的に取り組むことになったのです」(長島氏)

名刺管理のデジタル化に期待する「3つの効果」

 同事業部では、名刺管理のデジタル化が「営業の生産性を高めるだけでなく、会社全体の利益拡大に貢献する」という仮説を立て、「社内業務の時間短縮」「担当替えなどによる引き継ぎ作業の効率化と顧客接点時間の増加」「特にメジャーアカウント(MA、大手顧客)に対する戦略的な営業活動履歴の管理、活動品質の向上」といった効果を期待した。

 この環境を構築するにあたり、複数の候補の中から最終的に選んだのがSansanが提供する企業向けクラウド名刺管理サービスの「Sansan」だった。

 「リコージャパンでは、特にMA事業本部への営業活動について、企業プロフィールやこれまでの販売実績、案件、担当者の交流履歴などをまとめた“戦略書”を、それぞれの企業について作成しています。Sansanを使うことで、その質をさらに高めることができるだろうという狙いがありました」(長島氏)

 Sansanの試行運用が始まったのは2013年3月のこと。当初は、MA営業を中心とする一部部門の200ID強からスタートした。

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