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» 2014年10月29日 07時00分 UPDATE

ナレッジワーキング!!:ビジネスの秘密は紙ナプキンの裏に

ノートPCの元祖、新興LCCの雄、ネット通販の巨人、この3社に共通するものといえば? 彼らは、ふとした瞬間に浮かんだアイデアが霧散してしまう前に紙ナプキンに書きとめたのです。

[永田豊志,Business Media 誠]

筆者: すいません。

店員: はい、何かごようでしょうか?

筆者: ええ、紙ナプキンを追加で欲しいのですが……。

店員: 承知しました。

筆者: ありったけの紙ナプキンを。それと、ボールペンも。

店員: ボールペン……ですか?

 筆者の食事中には、たまにこんなやりとりが起こります。もちろん、紙ナプキンで口を拭くわけではありません。食事中に思いついたことを書き留めるためです。

 素晴らしいアイデアはふっと湧いて、スッと消えていきます。砂漠で見る蜃気楼のようなものです。気付いたときに書き留めないと、次に蜃気楼を見られるのはいつか分かりません。同じアイデアを思い付くことはあっても、そのときに手遅れになっている可能性も高いのです。

 常にノートを持参していればいいですが、そうでないからといってアイデアを記録しないのはNGです。紙ナプキンでも割りばしが入っている「おてもと」でもいいのです。詳細すべてを書き留める必要はありません。一番重要なエッセンスを残せればいいのです。

起業家たちが描いた紙ナプキン上のビジネスシークレット

 筆者だけでありません。創造的なビジネスモデルを構築して、世の中を変えた偉大な起業家にも紙ナプキン派が少なくないようです。

スマホの原型は紙ナプキン上のアイデア?

 スマートフォンやタブレットが当たり前の現在ですが、そのキッカケはずいぶん前にさかのぼります。1981年、当時のテキサスインスツルメントの技術者が同僚と食事をしているときに、IBM PCと互換性のあるポータブルコンピュータのアイデアを思いつき、そのアイデアを紙ナプキンに描いたのです。ちなみにIBM-PCは当時の主力コンピュータです。PCとはいえ、持ち運べるようなサイズ、重量ではありませんでした。

 彼は紙ナプキンに描いたアイデアをベンチャーキャピタリストにプレゼンし、モックアップ作成費用2万ドルを獲得しました。これがのちのコンパックです。コンパックは創業まもなくコンパックポータブルという持ち運び可能なPCをリリースし、バカ売れ。史上最短でフォーチュン500へのランキング入りを果たしました。

長距離バスやドライブの苦行から解放されたい

 サウスウエスト航空は、米国内の近距離路線にフォーカスしているため、日本ではなじみの少ない会社ですが、LCC(格安航空会社)のビジネススタイルの基礎を築いた会社として知られています。

 それまでほとんどの航空会社は「ハブ&スポーク」と呼ばれる形で路線を展開していきました。これは目的地がどこであれ、いったん中心となるハブ空港を経由するものです。そのため以前は直接、出発地から目的地に行くことが難しかったのです。

 そうなると、ビジネスマンは自分で車を運転するか、長距離バスに乗るほかありません。しかし、仕事のために米国内の拠点をしょっちゅう周遊するビジネスパーソンにとってこれは大変ですよね。

 サウスウエスト航空の創業メンバー3人は、パブに集まり、紙ナプキンの裏にダラス、ヒューストン、サンアントニオと3つの都市名を書き、それらを結ぶ線を引きました。そして「ハブ空港を経由せず、直接、出発地から目的地に飛行機で移動できる手段を作ろう」と誓ったのです。

アマゾンはなぜ物流に多額の投資を行なうのか?

 アマゾンは、他のECサイトとはかけ離れた成長を続ける企業です。インターネット通販であれば、「Webサイトを使いやすく」という点にフォーカスしそうですが、アマゾンは物流プロセスのイノベーションに命をかけています。

 ラジコンヘリに荷物を運ばせたり、物流センターの中でロボットに商品ピックアップさせたり、ユーザーが商品を購入する前に最寄りの配送所までオススメの商品を届けておいたり……。なるべく在庫を減らし、なるべくリスクを負いたくない。そんな常識をくつがえす大規模な物流システムへの投資を続けています。

 その根幹となるのは、創業者ジェフ・ベゾスがレストランの紙ナプキンに描いたとされるアマゾンのビジネスサイクル図です。その図は低価格を生み出すしくみやネットならではの際限ない品ぞろえによって「驚くべき顧客体験」を提供すれば、会社が成長し、さらなる低価格やサイトへの誘引につながることを示しています。

 それが現在でも「地球上で最も豊富な品ぞろえ」「地球上で最もお客さまを大切にする企業であること」という2つの企業ビジョンにつながっています。

アイデアが生まれる4B

 アイデアが生まれる場所として「4B」というキーワードがよく使われます。このBは、Bath(入浴中)、Bus(バスにかぎらず移動中)、Bed(就寝中や寝入りばな)、そしてBar(食事中や飲んでる最中)です。

 レストランや居酒屋はアイデアが生まれやすい場所。アルコールが入って気が大きくなっているからではなく、創造性の高まる大切な場所なのです。さあ、メモのご用意はいいですか? なければ、テーブルの上の紙ナプキンへどうぞ。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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