カリスマ社長引退、ジャパネットたかたの戦略を分析してみる(後編)ナレッジワーキング!!

SWOT分析を使って有名企業のビジネス戦略を立案してみる第2回。「機会」と「脅威」をPEST分析を使って整理してみます。

» 2015年01月28日 09時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 前回は、ジャパネットたかたのビジネス戦略を「SWOT分析」を使って把握するための下準備として「3C分析」による「顧客」と「競合」を明確化しました。また、競合との差別化ポイントを分析するために「価値曲線」というフレームワークを使って「強み」と「弱み」を比較しました。今回は、SWOT分析を行うために外部環境の「機会」と「脅威」を整理してみたいと思います。

ジャパネットたかたの戦略を分析してみる

市場に吹く風を読む「PEST分析」

 筆者の想定するジャパネットたかたの顧客は、地方在住のITが苦手なおばあちゃんです。この市場に吹く順風と逆風を「政治(Politics)」「経済(Economics)」「社会(Society)」「技術(Technology)」という4つの観点からまとめようというのが「PEST分析」です。

 政治は法律改正や政府の方針変更により影響を受けるもの、経済は景気や為替の動き、雇用率などの変化がもたらすもの、社会はライフスタイルや価値観の変化、技術は新しい技術がもたらす影響です。

 例えば、消費増税は政治的なイベントです。当然、消費に逆風ですから「脅威」に分類できます。逆にエコポイントなどの制度は「機会」になります。高齢化は一見、順風に思えます。しかし、一方でITに強い高齢者が増えることは逆風です。

 同じ事象でも、捉え方次第で「機会」にも「脅威」にも考えられるものもあるでしょう。技術であれば、テレビの売上構成が高い企業にとって4Kなどの新しい画質向上技術は追い風になるでしょうし、一方でスマホなどからの購入が便利になると、これまでの販売戦略を見なおさざるをえない企業も少なくありません。

 ジャパネットたかたの簡単なPEST分析例を作ってみました。みなさんは、どのような市場への機会と脅威を思いついたでしょうか?

PEST分析 PEST分析

SWOT分析でビジネス戦略を立ててみよう

 それでは、あなたが後継ぎ社長だったらと仮定して、今後どのような戦略を打ち立てていくのか、SWOT分析を使ってアイデアを出してみましょう。SWOT分析は、自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)、市場の機会(Opportunity)と脅威(Threatens)という2軸の視点を使います。

 価値曲線で得られた「強み」「弱み」、PEST分析から得られた「機会」「脅威」をSWOT分析のマトリクスに入れてみましょう。ここで考えたいのは、どうやったら「強み」を生かして「機会」をとらえ、利益を最大化できるのか? どうやったら「弱み」をカバーして、リスクを最小化できるのか? といったことです。

SWOT分析 ジャパネットたかたのSWOT分析例

 これまでに筆者が開催したワークショップで参加者から出たアイデアをいくつかピックアップしてみます。

  • 強みは説明力で商品を魅力的に見せる技術。これを生かして高齢者の必要なもの、家電以外も広く扱い、クロスセルを行う
  • 脅威として高齢者の中でもITが使える人が増えると予測されるので、テレビだけでなくネット動画によって強みである魅力的なプレゼンを行うサイトの構築やアプリを提供する
  • 増税は、かけこみ需要とその後のリバウンドというメリット、デメリットがあるので、リバウンド対策としてかけこみ需要時に購入してもらった家電等のアフターサポートを別サービスで提供する
  • 弱みであるアフターサポートは、むしろ街の電気屋さんとアライアンスを組む。競合を自社製品のディストリビューターとすることで他の通販会社にないネットワークを構築する
  • 知名度や資本力があるのが街の家電屋さんとの大きな違いなので、単なるセット販売ではない自社オリジナル製品を開発し、他の通販や量販店と競合しない戦略をとる

など、たくさんの戦略案が提案されました。

 前編・後編と2回にわたり、SWOT分析で戦略を立案するために3C分析、価値曲線、PEST分析という異なるフレームワークを組み合わせて、SWOTの前提条件を抽出してみました。いきなり、強みを議論したり、SWOT分析を行ったりするよりも、論理の筋道がすっきり整理され、分かりやすくなるのではないでしょうか?

参考文献:「ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門」(日経BP社)

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

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