若手に煙たがられる“自慢話上司”になっていませんか?そのひとことを言う前に(1/2 ページ)

落ち込んでいる若手を励ましたり、部下に仕事の面白さを教える際に、自分の“体験談”を教えるのは有効な手ですが、ともすれば自慢話や説教っぽくなって反感を買ってしまいがち。どうすればうまく相手に自分の思いを伝えられるのでしょうか。

» 2015年02月26日 08時00分 公開
[岩淺こまき,Business Media 誠]

連載「そのひとことを言う前に」

 職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションや考え方のヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。


 「昨日こんなことがあってさ……」「この間旅行に行ったんだけど、ひどい目に遭ったんだよねー」

 こんなふうに、自分の体験談をきっかけに会話を展開する人は多いと思います。相手が笑ってしまうおかしな体験や、聞く人を引き込む切ない話など、日常会話を盛り上げるには欠かせない話題でしょう。

 実はこの“体験談”、うまく活用することで仕事にも役立ちます。部下や後輩の育成に生かすことができるのです。特に、相手が仕事で失敗して落ち込んでいるときなどは使いどころが多いスキルです。感情が揺れているときに、励ましたり、仕事の面白さや難しさをうまく伝えることで、相手は強く共感し成長するはずです。

“理屈”や“正論”だけでは相手は動かない

photo 多くの人は、感情が揺れているときに“理屈”や“正論”だけでは心は動かないもの

 若いころに仕事で失敗したときの気持ちを思い出してみてください。クレーム対応が遅れて顧客から叱られ、さらに上司からもきつく言われて完全に落ち込んでしまった。誰しもそんな経験の1つや2つあるのではないでしょうか。

 気持ちが切り替えられず、仕事が手につかない――そんなあなたに、先輩が近づいてきて次のように言ったと想像してみてください。

落ち込むのも分かるけど、早く切り替えて仕事した方がいいよ

電話をしなかったのは悪かったよね。でも、今やるべきことは、今まで以上に仕事して、上司や顧客の信頼を再度得ることなんじゃないかな?

 いかがでしょうか。「早く切り替えて頑張らなきゃ!」と思えましたか? こう思えるのは、物事に冷静に対処できる人。非常に立派だと思います。

 しかし、世の中そう思える人ばかりではないのが現実です。人間は“感情の動物”と言われていますが、多くの人は感情が揺れているときに“理屈”や“正論”だけでは心は動きません。かえって「確かにおっしゃる通りですけどね」と反感を招くことさえあります。

相手の心を動かす“体験談”

 そんな相手の心を動かすのに有効なのが“自身の体験談”です。「私も以前こういうことがあってさ……」と自分の体験を語ることで自然と熱も入りますし、近しい人の話題なので、相手も感情移入がしやすくなったり、状況をイメージしやすくなるでしょう。

 ただし、体験談なら何でもいいというわけではありません。よかれと思って使った体験談が逆に作用してしまうこともあります。次の2パターンを見てみてください。どちらがよいと思いますか?

a)「早く切り替えて仕事した方がいいよ。実は私も以前、約束の電話をしなかったことがあったんだよね。でも普段からその顧客によくしてもらってたから、頭下げたら許してもらえたけどね。上司からも怒られなかったし。日ごろの行いがモノを言うって感じだったかな。君も普段から顧客との関わり方を考えるといいと思う。がんばって!」

b)「早く切り替えて仕事した方がいいよ。実は私も以前、約束の電話をしなかったことがあってね。そのときは今の君以上に怒られて、正直仕事辞めようと思うくらい辛かったよ。あれくらい(の叱られ方)で済んでよかったじゃない。よくあることだよ、気にしない気にしない!」

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