京浜東北線・根岸線の架線切断事故にもの申す杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)

» 2015年09月04日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 安全性の面ではデッドセクションが優れているけれど、列車の編成以上の長距離で電力が供給されない。デッドセクション内では電車の加速ができないし、速度も下がる。だから駅間距離の短い区間ではエアセクションが採用される。報道によるとエアセクションは関東に900カ所もあるそうだ。架線を注意してみると並んでいるところを見つけられる。夜ならスパークで分かる。

 ATCは自動列車制御装置の略だ。従来の赤・黄・青の地上信号に代わり、運転席に最高速度を指示する。速度を超えていた場合は自動的に減速し、危険な場合は非常ブレーキを作動させる。京浜東北線・根岸線はデジタル式のATCを採用しており。路線の状況によって最適な非常停止位置を決定する仕組みだ。

 その「最適な非常停止位置」の判定にはエアセクションの位置も考慮されている。ただし、文字通り「非常」の停止位置であり、電車同士の衝突防止装置である。作動した場合は急ブレーキとなり、乗客に衝撃を与えかねない。クルマに例えると、赤信号で停まるたびにフルブレーキとなってエアバッグが作動するようなもの。そうならないように、あらかじめスムーズに停めたい。これは「人間の運転士」なら、誰もが心掛けることだろう。

エアセクションとデッドセクションの仕組みの違い。エアセクションについてはJR東日本の研究開発紹介サイトの図が分かりやすい エアセクションとデッドセクションの仕組みの違い。エアセクションについてはJR東日本の研究開発紹介サイトの図が分かりやすい
電力を安定供給するため、セクションによって架線区間を細分している(写真はイメージです) 電力を安定供給するため、セクションによって架線区間を細分している(写真はイメージです)

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