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官僚、弁護士、編集長――“リモートワーク3人衆”が語る「地方で働くと生産性が上がる、これだけの理由」「働き方改革×地方」(1/5 ページ)

» 2018年12月05日 08時30分 公開
[今野大一ITmedia]

 「働き方の常識をシフトせよ〜 脱東京、地方の可能性を考える」と題したイベントが11月、都内で実施され、働き方の多様性と地方の価値について議論が交わされた。

 トークセッションには、テクノロジーの側面から「地方創生」を推進し、自身も東日本大震災以降、1年の半分ほどを地方で過ごしている経済産業省 情報技術利用促進課 企画官 大西啓仁氏と、世界中を移動しながらリモートワークを実践するファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士の藤井総氏、東京都と富山県の2拠点生活によってビジネスを展開するam.(東京都江東区)CEOでインターネットメディア『70seeds』編集長の岡山史興氏が参加。それぞれの立場で意見を出し合った。

 経産省の官僚、弁護士、編集長という異色の“リモートワーク3人衆”が語ったディスカッションから、地方で働くことの意義と可能性を考えてみたい。モデレーターを務めたのはITmedia ビジネスオンライン編集部の伏見学。

phot 左からITmedia ビジネスオンライン編集部の伏見学、経済産業省 情報技術利用促進課の大西啓仁氏、ファースト&タンデムスプリント法律事務所の藤井総氏、インターネットメディア『70seeds』編集長の岡山史興氏

リモートワークをするメリットとデメリット

――一つの地域だけでなく他拠点で働くメリットとデメリットはどんなところにありますか?

藤井: 私は去年、1年のうち111日間を海外に滞在して働いていましたが、メリットはたくさんありますね。いわゆる弁護士という職業は「労働集約型」のビジネスです。つまり働いた時間がそのままお金になるのですね。労働集約型のビジネスで売り上げを上げるためには、方法が3つあります。1つ目は稼働時間を延ばすこと。2つ目は業務効率を上げること。3つ目は単価を上げることです。

 リモートワークを実現すれば、スーツに着替えてオフィスに行く時間を減らせますし、家や出先で隙間時間を使って仕事ができるので稼働時間を伸ばせますね。また、無駄な会議もなくなり、オンラインベースで仕事ができるので業務効率も上がります。さらに仕事がスムーズかつスピーディーに進むので、その部分が顧客から評価されて単価も上がるのです。ですから私のような労働集約型のスペシャリストにとって、リモートワークは売り上げも上がり、とても大きなメリットがあります。

 一方、デメリットは、誰とも会わずに家で仕事をするので、実は結構な孤独を感じることです(笑)。私の場合は、妻がIT企業で働いていて日中は家にいないので、1日中誰とも会わない日もあります。その点は多拠点生活をしたり、地方でいろいろな人に会ったりして問題を解決すればいいのだと思います。

岡山: 私は東京都と富山県で2拠点生活をしていて、週の半分は東京、残りの半分は「日本一小さな村」といわれる富山県舟橋村に住んでいます。編集者という仕事の性質上、取材で地方に行くこともあって、もともと半分はリモートワークをしている状態でした。そこで自分の会社のメンバーにも「リモートワークをすることに慣れてもらおう」と思い、毎週月曜日を「リモートワーク・デイ」にしたのです。

 10人前後の全社員が、会社に来てもいいし家で働いてもいいという制度を作ってみました。そこで感じたのは、「実はそんなに支障はない」ということです。

 そのような経緯から、皆がオフィスにいないことを前提に、どれだけ自立して働けるかを試しながらリモートワークを導入しました。心掛けたのは、リモートワークをすることで一人一人の生産性を上げるような制度設計にすることです。

 もう一つのメリットとして、やや抽象的になりますが、リモートワークをすると「人にやさしくなれる」ことがあり、あらためてやってよかったと思いました。なぜかというと、社員同士が直接会える時間が限られてくるので、いかに互いにコミットしていくかを皆が考えられるようになったからです。

 一方のデメリットはそこまでないのですが、あえて挙げるとすればSlack上でのコミュニケーションで時々食い違いが発生したことですね。言葉の裏にある意味が伝わり切らずに無駄な作業をさせてしまったり、口論になったりということは確かにありました。また、これは個人的なことですが、2拠点生活は移動で体力を使うので風邪をひきやすくなったこともあるかもしれません(笑)。

phot 岡山氏は、一年の半分を「日本一小さな村」といわれる富山県舟橋村で過ごす
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