長期安定雇用希望者のパターンをまとめると、次の図のようになります。
雇用契約と職務ニーズのどちらも無期限の場合(図の左上)は、労働者の希望と雇用契約、職務ニーズの三方間にズレが生じないため「本意」です。一方、問題なのは下段です。そもそも長期安定雇用希望なのですから、雇用契約が期間限定であれば、職務ニーズの期間にかかわらず「不本意」となります。
ここまでに見た2つの図から、「期間」の軸で不本意が発生するのは、働き手が「長期安定雇用希望者」であることを前提に、以下のどちらかのパターンです。
(1)長期安定雇用希望者が、職務ニーズ「無期限」の仕事に「期間限定」の雇用契約で従事する場合
(2)長期安定雇用希望者が、職務ニーズ「期間限定」の仕事に「期間限定」の雇用契約で従事する場合
(1)と(2)は、一見同じように見えても、その性質は大きく異なります。
(2)のように最初から職務ニーズが期間限定だと判明している場合は、雇用契約も期間限定になることは理にかなっています。例えば、長期安定雇用を希望する働き手が無職になった場合、無収入になるよりは一時凌ぎでも収入を得たいと考えるかもしれません。その際、本来不本意ではあるものの、職務ニーズと雇用期間との間に矛盾がない(2)のパターンであれば、割り切って納得感を持って選択できます。
一方、(1)の場合は、職務ニーズと雇用期間との間に矛盾があります。不本意ながらも割り切って期間限定の雇用契約を選択したとしても、心のどこかで「職務はなくなっていないのに、なぜ期間限定で辞めなければならないの?」とわだかまりが生じる可能性は十分ありえます。
冒頭で取り上げたハローワークの労働相談員の場合は、この(1)に該当しそうです。
大企業の倒産で瞬間的に多数の労働者が解雇された場合など、一時的に労働相談ニーズが発生したようなケースであれば、期間限定で臨時職員を増員することがあるかもしれません。その場合は職務ニーズも期間限定なので、(2)の方に分類されます。
それに対し、恒常的に発生している労働相談の場合は状況が違ってきます。雇用契約が満了を迎える3年が過ぎても労働相談ニーズが存続していれば、仕事を失う労働相談員の中に納得できない感情が残ってしまっても無理はありません。
ただ、景気変動などで失業者の数は増減するため、今と同じだけの職務ニーズが無期限に発生し続けるとは言い切れない面があるのも確かです。また、公務員には人事院規則など制度上の縛りがあって簡単に無期雇用化できないという事情もあるかもしれません。しかし、少なくとも雇用期間と職務ニーズ期間との間にズレが生じやすい状況になっていることは明白です。そのズレは、長期安定雇用を希望する働き手にジレンマをもたらします。
では、このジレンマを少しでも解消するためには、どうすればよいのでしょうか。
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