クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

内燃機関から撤退? そんな説明でいいのかホンダ池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/8 ページ)

» 2021年05月03日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

Q 実現の課題は何か?

A 課題はたくさんございます。まず開発でいうと、一番大きいのはバッテリーだと考えています。既存の液体リチウムイオンバッテリーについては、非常に運ぶのが難しいという特性上、地域毎に戦略を変えなければならないので、そのあたりを慎重にやっています。慎重というのは、今のバッテリーは非常に燃えやすい特性があります。クルマのコストの約半分を占めるようなバッテリーが燃えて、品質問題を起こしますと、(巨額のリコール費用が発生する)大きな問題になります。今のバッテリーのコストでいうと一般的にはパック単位で1kWあたり100ドルを切るかどうかが限界線といわれておりまして、ただそれだと今のビジネスを前提とすると、そこまで下がっても収益が上がらないと認識しております。ですからそこにさらに全固体電池のような技術的ブレークスルーがあれば事業性の改善ができるのではないかと。もうひとつ全固体電池は、特性上非常に燃えにくいというのもあります。なので技術的キーはいろいろな意味でバッテリーだと考えています。

 しかしそこだけでは事業的に成り立つことは非常に苦しいと考えておりまして、EVは部品点数が減りますので、生産工場のラインをEVに最適化していくことを、どこかのタイミングで考えていくことは検討中です。販売に関してもディーラーベースとなる既存の売り方ではなく、ディーラーを持たずにオンライン販売をする売り方を新興勢力は進めておりますが、それに対してわれわれ既存の自動車メーカーはどう戦っていくのか。

 どの領域をとっても「こうすれば上手くいく」という方法がない中で、非常に難易度が高い目標を今日は提案したということです。目標を設定して、あらゆる領域で目標達成に向かって進んでいけば、必ず到達できると私は確信しています。根拠は何かと聞かれると、今ははっきり説明できないということですけれど、目標を明確にしたということが第一歩であるということだとご理解いただきたいと思います。

A 質問が出なかったので勝手に自分でしゃべりますと、なぜ日本だけ20%なのかということですけれど、日本は突出してHVの比率が高いということで、日本の電力事情を考慮すると、30年にCO2を下げるという観点でいうと、コンベンショナルなエンジンからHVに変えていくと相当CO2が減ります。当然EVも出していきますが、日本市場に限りますと、HVの比率を増やすということは現実的な解であると考えております。決して日本市場を下に見ているということではなく、30年までは少なくともその戦略で行った方がCO2が下がると考えております。

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