クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

内燃機関から撤退? そんな説明でいいのかホンダ池田直渡「週刊モータージャーナル」(8/8 ページ)

» 2021年05月03日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 どうしてそんなことになったのか? 三部社長の言葉の端々ににじむのは「2050年のカーボンニュートラルを目指すのであれば」というフレーズで、それはつまり、そこを前提として考えなさいという課題を政府から突きつけられているということを意味する。それについてはできるとかできないとかを考えることを許さないという意味である。いわゆる所与の条件としてこの枠組みを決められてしまえば、バックキャストでスケジュールを考えるしかなくなる。だからスケジュールだけが決まり、そのための具体策が何もないという馬鹿馬鹿しいことが起きるのである。

 この問題、ホンダにも猛省を促したい。何より、こんな無理難題をお上から突きつけられたとしたら、技術の正論で反論すべきだったのではないか? それをせずに、ラクをして、とりあえず可能性すら分からないスケジュールを引いてみせるのがホンダのチャレンジスピリットなのか? 遠い昔、自動車貿易自由化に際して、通産省から押しつけられた自動車メーカー再編成合併案を否定すべくF1に打って出て、ホンダはひとりでやれる気概を示した時とは雲泥の差ではないか? お上へのお追従でホンダの精神を捨ててもいいのか?

 そしてもっと悪いのは政府である。「いいからやれ」「できるかできないかではない。やるんだ」。それはブラック企業の常套(じょうとう)手段であり、企業に対する政府のパワハラである。本来であれば自動車産業の550万人の力を集結して逆襲すべき時だと筆者は強く思う。こんな横暴を許してはならない。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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