念のため断っておきますが、私は「働かない会社員」を擁護するつもりは1ミリもありません。
しかし、年を取るほど、若い社員よりも能力が低く、新しいことへの適応力が劣り、仕事に取り組む意欲が乏しくなる、と思われていることが残念で仕方がないのです。だって、若いからといって仕事ができるわけでも、創造力が高いわけでもないのですから。
これぞ「無意識バイアス」。そう、無意識バイアスによる年齢差別です。
繰り返しますが、確かにそういう“困ったおじさん”もいます。が、全ての50代がそういうわけじゃない。
女性差別、男性差別などのジェンダーバイアスや性差別と同様に、年齢への無意識バイアスがはびこっているだけです。しかも、厄介なのは、無意識バイアスが作り出す世間の「まなざし」により、本人自身が「私は会社に不利益をもたらすかもしれない」と気後れする心の動きが存在する。
自分の能力を低めに評価したり、意見するのを恐れたり、「若い人の意見には口出さない方がいい」「自分たちの時代とは違うからね」などの言葉で、自らを「非戦力化」したりしてしまうのです。
フランスの哲学者、ジャン=ポール・サルトルは、社会におけるまなざしを「regard」と名付け、「人間は気付いたときにはすでに、常に状況に拘束されている。他者のまなざしは、 私を対自から即自存在に変じさせる。地獄とは他人である」と説きました。
他人の「まなざし」は想像以上に私たちをおとしめます。
「働かないおじさん」と冷やかされるベテラン社員の中には、本来であれば「もっと活躍できる人」もいるのに、50代をお荷物扱いする世間の「まなざし」により、正真正銘の「働かないおじさん」が量産されている可能性が極めて高い、と私は考えているのです。
実際、先日人事コンサルティングのフォー・ノーツ(東京都港区)が公表した「50代社員に関する意識調査」でもその傾向が認められています。
「あなたの職場にいる身近な50代の社員は、今後新たなスキルや知識を身につけたり、未経験の仕事に取り組むことができると思いますか」との問いに、50代が遠慮がちに答えていることを伺わせる結果が出ていました。
20代の53%が「若い社員と同様にできる」と答えたのに対し、50代では38%と15ポイント低くなっていました。一方、50代の49%が「若い社員には劣るができる」と答え、20代の30%と比べ、19ポイントほど高い結果でした。
また、「あなたの職場にいる身近な50代の社員に、期待する能力はどのような点ですか?」という質問には、50代の5人に1人(22%)が「特にない」と否定的に答えたのに対し、20〜40代は、ベテラン社員の経験に期待する回答が目立っていました。
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