次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(8/8 ページ)

» 2021年12月05日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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整備計画へ格上げは誘致活動とデータで決まる

 73年組の一部が動きを見せていることで、72年組の北海道新幹線の札幌〜旭川間についても動きが出た。18年、当時の北海道知事は北海道新幹線の札幌以北、北海道南回り新幹線について議論を始める考え示した。その中には基本計画路線を離れ、稚内や新千歳空港も視野に入れていた。その後は知事交代などで動きはなかった。しかし20年3月に、札幌〜旭川間沿線23市町などが「北海道新幹線旭川延伸促進期成会」を設立し、11月18日に国土交通省へ整備計画の格上げを求めた。

 新幹線の基本計画路線は、政府が必要と認められたときに「整備計画」が決定し、調査予算がつくなど具体的な検討が始まる。その後、自治体の負担、JRの運行引き受けと並行在来線切離しなどの条件が整うと着工となる。

 73年組はまず、基本計画路線を「整備計画」にしてもらうように要望活動を実施している。その材料として独自に算出した費用便益比、整備効果などの資料を提出する。つまり、要望活動といっても、ツテを頼ってあいさつする程度では意味がない。

 いまのところ、整備計画の格上げにもっとも熱心な路線は「四国新幹線」。次位が「奥羽新幹線」と「東九州新幹線」といったところか。しかし、費用便益比の算出時期から時間が経っていて、現在の経済状況、少子化傾向、コロナ後の需要見直しが整っていない。実現に近づくためには、費用便益データの更新と、便益比を上げるための施策も必要だ。

 繰り返すけれど、「新幹線、作ってやる。私に任せなさい。ヨッシャヨッシャ」という豪腕政治家はもういない。あいさつ10回より、説得力のあるプレゼン1発が必要だ。乗り鉄の筆者としては成就を願うばかりである。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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