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50代で電通を退職した元コピーライターが、ドローンで起業したワケ元電通マン、今ドローンマン(3/3 ページ)

» 2022年01月20日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]
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コピーライティングもドローン事業も根底に流れるものは同じ

 広告クリエイティブをずっと続けたいと思い、電通を退職してNHに参加した森田さんだが、現在ではドローン事業に関わっている比率のほうが高いという。「12月は90%くらいが、ドローンだった」と森田さん。「とはいえ、NHの仕事もおろそかにしているわけではなく、月に2回の提案作業をきちんと行っている」とのこと。

 「NHが応援してくれるから、ドローン事業に携われている。空解は、電通とは関係ないところで立ち上げた会社なので、NHからなにかの業務を委託されるということはないけれど、将来的には経理や総務、士業などをNHへアウトソーシングできるようになりたい。NHには、それら業務を行える人材がそろっているから」(森田さん)

 森田さんには、空解を通じて実現したいことがいくつかあるという。一つは現在のものより大型化したドローンを使い、日本全国をつなぐこと。

 「300kmの航続距離と、国内6カ所の拠点があれば、一晩で青森から鹿児島までモノを運べる。そういうサービスを作れればと考えている」(森田さん)

 しかし、事業化するにはパイロットが必要になる。フルオートとはいえ、トラブル発生時には、安全なところまで飛ばさなければならないからだ。「われわれのネットワークが生きてくる」としつつも、人材を育てる必要性も感じている。

photo 将来的には空解負担でのドローンスクールを開きたいという

 そこで森田さんが将来的に考えているのが、「無料ドローンスクール」の開催だ。「子どもたちの貧困が社会問題になっている。貧困を解決するには、手に職をつける必要がある。金銭的支援は一時的なものに過ぎない。パイロットとして技術を身に着けてくれれば、当社でそれを生かしてもらえる。彼らにとっては生活基盤を築けるし、ぼくたちにとっては、パイロットを確保できる。みんなが幸せな未来が見えてくる」

 長年広告クリエイティブに携わってきた森田さんが、ドローン事業に携わるようになったのは、ラジコン飛行機操縦という経験があったからということだけが理由ではない。“人のためになるものづくり”への欲求がそうさせたのだ。

 「文字を書いて人の役に立つ、喜んでもらえることと、飛行機を作って飛ばすことで世の中の役に立つ、いろいろな人たちを幸せにすることは、根底に流れるものは同じ」と森田さん。「人のためになるものづくりへの欲求があるから、このようにトランスフォームできたのだと思う」と自己分析する。

 「ひとりよがりでは、ビジネスは成り立たない。会社は個人のものではない。世の中の役に立てる存在でなければならない。自分たちがやりたくてやる、でもそれが世の中の役に立つ。成長は二の次。みなさんに評価してもらうことを目指して、事業を進めていきたい」(森田さん)

 コピーライター、クリエイティブディレクター、マーケッター、起業家、ラジコン飛行機オペレーターなど、さまざまな顔を持つ、いわばジェネラリストともいえる森田さんだが、最初からなんでも屋を目指すことはオススメできないという。最後に、これからキャリアを積み上げたいと考えている人へ向けた次のような言葉をもらうことができた。

 「何かしらの専門性を1つ持っていたほうが絶対にいい。“専門”なので、はじめは下積みがあるかもしれない。でも、それを磨き、武器として身につけられたら、オリジナリティーを後から出すことができる。

 それを軸にほかのことにチャレンジすればうまくいくと思う。後からトランスフォームすることも視野に入れて、若いうちに“これだけは譲れない”というような専門性を身につけてほしい」

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