――インクカートリッジタイプと比べて10倍くらい長持ちする大容量インクタンクプリンタの販売が好調なようですね。その理由は何でしょうか。
大容量インクタンクプリンタは10年以上前にインドネシアなど東南アジアで始まりました。当時使われていたインクカートリッジモデルを勝手に改造して外付けで大容量のインクタンクを付けたものが現地で販売されており、われわれも2010年10月から純正の大容量インクタンクプリンタの販売を始めました。
日本では16年から販売し、現在は先進国にも広げて170カ国・地域以上で展開しています。コロナ禍の前から増え始めて、18年度は全世界で約900万台、19年度は約1000万台売れて、昨年末までに累計で6000万台を超えました。
それまでは、プリンタ本体機器は安いものの、カートリッジを頻繁に交換してもらうことによって収益を上げるビジネスモデルでした。それが、最初に高い大容量インクタンク付きのプリンタを購入してもらって、その時点で収益を確保するモデルに変わっていきました。
しかし、大容量インクタンク付きプリンタは3万円近くもしました。それまでのカートリッジタイプが1万円もしないのと比べると先進国では高すぎるとして、なかなか売れませんでした。それが一昨年くらいから米国で元プロバスケットボール選手のシャキール・オニールを使ってプロモーションしたところ、売れるようになりました。
欧州では元陸上短距離選手のウサイン・ボルトを使っています。これでかなり認知度が上がってきました。
――ライバル企業は大容量の商品を出していないのでしょうか。
大手のヒューレットパッカード(HP)はサブスクリプションのカートリッジモデルの販売が中心です。キヤノンも出してきてはいますが、ラインアップは当社の方が多く、現在は大容量のシェアはうちがトップで、販売しているプリンタの7割が大容量タイプになっています。
――今後のプリンタの販売戦略は。
全体的にはペーパーレス化で紙への印刷需要は減るでしょう。一方、オフィスは激減というほどは減っていません。ただコロナ禍でオフィスから家庭に需要はシフトしてきていると思います。
プリントボリュームは徐々には減っていくでしょうが、しばらくは大容量インクタンク搭載のプリンタ需要は減らないので伸ばしていきたいと考えています。今後は、数パーセントしかシェアを持っていないオフィス向けプリンタのシェア増加を狙っています。
オフィスで使われているプリンタの大半が熱を使うレーザープリンタですが、当社のインクジェット方式のプリンタは熱を使わず、メンテナンスも手間がかかりません。環境にも優しい利点があるので、レーザーをインクジェットに置き換えていきたいと考えています。他社はコロナ禍でオフィス用プリンタを減らした一方、当社は増えています。このため、環境意識の高い欧州市場を中心に拡販を図る考えです。
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