TCOの中にどういう種類のコストが含まれているのかは必ずしも明確ではないが、ソフトウェアのライセンス体系の複雑さや、サイクルがまちまちなアップデートがコストアップ要因になっていることは間違いないだろう。サンの「Sun Java Systems」は、この問題に対するソフトウェア提供側からの解決案である。
サン・マイクロシステムズ(サン)は2003年10月、国内での「Sun Java System」の展開について発表した。
Sun Java Systemの概要を簡単に表現すると、ミドルウェア群のライセンス体系を単純化し、従業員数に基づくシンプルな課金(従業員1人あたり年間1万1000円)を行なうことで、ライセンス管理にかかる手間とライセンスコストそのものを大幅に削減しようとするものだ。ある意味では、ミドルウェアソフト群の大幅ディスカウントと言えないこともない。
Sun Java Systemには、図1のように各種パッケージが用意されており、それぞれ複数のソフトウェアが含まれている。ただ、実際の提供形態をみると、中核となるのはJava Enterprise System(JES)で、他のパッケージはJESに追加するオプションパッケージと言ってしまって差し支えないようだ。
JESにはWebベースのアプリケーションを展開するために必要となる基本的なソフトウェアに加え、サポートも含まれているため、JESの導入だけで企業システムのインフラ部分が構築できることになる。
さらに、1パッケージ化したことに伴い、各ソフトウェアのリリースタイミングも統一される。
つまり、JESでは「ライセンス体系の単純化」「ライセンスコスト自体の低価格化」「アップデートに関する作業負荷の低減」の3つの改良を同時に実現することで、ユーザー企業のTCO削減に大きく寄与するものとなっている。
サンではこのところ、「システムベンダー」という立場を改めて強調している。「バラバラの部品ではなく、きちんと組み上げられたシステムを提供する」ということだ。今回のSun Java Systemという名称にも、当然その意図が込められている。
JESのインパクトは、実は採用されたシンプルなライセンス体系による部分が大きい。
システムがサービス対象とするユーザーの数は全くカウントされないので、その点からは、従業員数が相対的に少なく、かつサービス対象ユーザー数が多い企業は得になり、逆にサービス対象ユーザー数が少ない一方で従業員数が多い企業では割高になる、と考えられる。たとえば、営業に携わる人員が外部の代理店という形で独立している保険業などでは、本社の従業員数は少ないので得で、製造業など、多数の工員を抱える企業は損になる、と考えられる。
こうした従業員数に基づくライセンス設定が妥当かどうかについては、議論の余地もある。しかし、これまでのエンタープライズ向けソフトウェアといえば、算定基準はまちまちであるものの、実はその金額がデスクトップアプリケーションとは比較にならないほど高額であるという点では共通しており、そこには、「ソフトウェアの使用量に応じて料金を支払うべき」という暗黙の了解が存在していた。
この了解をサーバファームのレベルに拡大し、かつ管理の負担を大幅に減らしつつユーザーに提供しようとしたのが、まさに「ユーティリティコンピューティング」の考え方である。そして、ここでも問題になるのは“使用量”をどのような基準に基づいてどう測定するか、という点である。
実は、JESのライセンス設定の特徴は、「使用量の測定」を完全に放棄している点にあると言える。これは言い換えれば、これまでの従量課金から定額課金へとシフトチェンジしたようなものである。
既存のライセンス体系でソフトウェアを利用していたユーザー企業に取ってみれば、同じくらいの規模の他社の支払いがどのくらいになるか、という問題以前に、自社が支払う金額を大幅に安くできるということになる。
PDFでは、各パッケージの内容や、このライセンス体系が実際の現場に照らし合わせてみたときにどの程度TCOの削減につながるかなどについての深く掘り下げた考察が加えられている。
そのほか、米サン・マイクロシステムズのマーケティング&ビジネス・マネジメント/ソフトウェア担当バイスプレジデントのアニール・ガードレ氏にJava Enterprise Systemのライセンス価格体系に関して聞いたインタビューを読むことができる。一石を業界に投じたこのライセンス体系について理解を深めてみてはどうだろう。
本特集はソキウス・ジャパンが発刊している月刊誌「Open Enterprise Magazine」のコンテンツをPDF化したものを公開します。同特集は2004年1月号に掲載されたものです。
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