日本IBMがパーベイシブ・コンピューティング戦略推進、WebSphere Everyplace Mobile Portal V5を発表

「パーベイシブ・コンピューティング」をPC革命やインターネット革命の次の変革として位置づける日本IBMが、「WebSphere Everyplace Mobile Portal V5」や「IBM Workplace Client Technology, Micro Edition」の提供開始を明らかにした。

» 2004年07月13日 17時51分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 日本アイ・ビー・エムは7月13日、モバイル端末用にコンテントを変換するミドルウェア「WebSphere Everyplace Mobile Portal V5」の出荷開始に伴い、同社のパーベイシブ・コンピューティング戦略をプレス向けにブリーフィングした。また、5月中旬発表の「IBM Workplace」構想を技術的に支える「IBM Workplace Client Technology, Micro Edition」の提供が既に始まっていることも明らかにされた。

 IBMは、「パーベイシブ・コンピューティング」をPC革命やインターネット革命の次の変革として位置づけ、オープン標準によるエコシステム(ISV、IHV、サービスプロバイダー)の構築や、各種のサービス、テクノロジーの提供を進めている。具体的には、企業がその基幹業務システムをモバイル化するのを支援したり、通信事業者およびサービスプロバイダーがモバイル端末向けのサービスを効率良く提供するのを支援しているほか、ViaVoiceで培った音声認識・音声合成の技術などを組み込み用の部品として提供するOEMソフトウェア事業も本格化している。組み込みソフトのサービス提供は、今年1月に専任の体制が整えられ、年内にはそのスタッフが100人に増員されるという。

 ソニーがデジタル家電向けに同社のDB2 Everyplaceを採用したほか、日本生命がIBM Workplace Client Technology, Micro Editionによって「基幹アプリケーションをモバイルワーカーの手のひら上で動かす」(同社パーベイシブ・デバイス・ソフトウェア営業部長の瀬川朱美氏)など、具体的な事例も出てきている。

日本生命がIBM Workplace Client Technology採用

 IBM Workplace構想を支えるIBM Workplace Client Technologyは、クライアント環境ながら、小型のJavaアプリケーションサーバとデータベースを搭載し、ユーザーインタフェースのフレームワークやプラグインのアーキテクチャとしてEclipse 3.0を採用する。さらにプロビジョニングのためのTivoliエージェントや、オフライン時の使い勝手を改善するためにレプリケーション機能も盛り込まれている。その狙いは、サーバによってクライアントのコンポーネントを集中管理する次世代のサーバ管理型クライアントの提供だ。Rich EditionとMicro Editionがあり、後者がモバイル端末向けという位置づけだ。Javaだけでなく、必要に応じて実行環境をWebブラウザをプラグインできるため、例えば、COBOLのアプリケーションもダウンロードして利用することができる。

 「ニッセイWebシステム」では、IBM Workplace Client Technology, Micro Editionを6万台に上るノートPCで採用し、これまではオンラインでしか動作しなかったJavaサーブレットをオフラインのノートPCで利用したり、COBOLの保険料シミュレーションプログラムを必要に応じてダウンロードし、やはりオフラインのノートPCで稼動させて提案書を作成する、といったことも可能にしている。

 「サーバと(モバイル)クライアントで同じアプリケーションを利用するため、教育やメンテナンスのコストが節約できる。また、“オン”だけでなく、“オフ(ライン)”の機能もパーベイシブ・コンピューティングでは重要だ」と話すのは同社ソフトウェア部門でパーベイシブ・コンピューティング営業部長を務める中垣勝博氏。

「M×N」のマトリックスを解決

 この日発表されたWebSphere Everyplace Mobile Portal V5は、XDIME(XML-based Device Independent Markup Language)を利用して、一つのコンテントでさまざまなモバイル端末に対応できるようにする変換ミドルウェア。新たに登場する端末にもWebサイトからのダウンロードで対応する。アプリケーションやコンテントを多様なモバイル端末に合わせるという「M×N」のマトリックスを解決することで、通信事業者やサービスプロバイダーは、コンテントの開発コストを大幅に節約できるという。

 日本IBMでは、2000年からWebSphere Transcoding Publisherを提供してきたが、こちらはコンテント変換のみの機能だけ。WebSphere Everyplace Mobile Portal V5は、ネットワーク事業者やサービスプロバイダー向けのソリューション体系であるWebSphere Everyplace Service Delivery V5の一製品であり、ソフトウェア管理、ユーザー管理、開発のための各種製品も用意されている。

 パーベイシブ・コンピューティング営業部の首藤薫氏は、「データセンター事業者が、顧客企業向けにコンテント変換サービスを提供するという新しいビジネスも考えられる」と話す。

 WebSphere Everyplace Mobile Portal V5は、AIXとSolarisで稼動し、価格は2327万3000円から。

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