StorageTekは、この問題に対処するために、9840 VolSafe、9940 VolSafeと呼ばれるWORM(Write Once Read Many)メディアを用意している。機能拡張されたT9840/T9940テープドライブにこれらのVolSafeカートリッジを挿入すると、ドライブは自動的にVolSafeモードに切り替わる。このVolSafeモードでは、カートリッジの未使用部分にのみデータを書き込むことができ、以前書き込まれたデータを消去したり、新たなデータを上書きできない仕組みとなっている。
「9840/9940 VolSafeカートリッジは、米証券取引委員会(SEC)が採択した規制を含む、電子的ストレージに関する最も厳しい法的条件を満たしています。このようなWORMメディアには光ディスクという選択肢もありますが、アーカイブ/リストアの速度(データ転送速度)、カートリッジあたりの記憶容量、メディアの耐久性などを総合的に踏まえますと、テープに大きな分があります」(山崎氏)
さらに、来年4月から施行される個人情報保護法も、データの保管に密接に絡んでくる。企業は、この個人情報保護法によって個人情報の利用、管理についてさまざまな義務を負うことになる。
現時点でテープに保管された個人情報に関する規制はまだない状況だが、いずれ法の手が及んでくることは間違いない。そして、もしこうした個人情報保護法も視野に入れてストレージシステムを構築するとなると、データの改ざんを防ぐだけではまだ不十分だ。データの改ざん防止に加え、テープカートリッジを簡単に取り出せないようにテープライブラリにしっかり鍵をかける、テープライブラリ自体を入室管理の行き届いた安全な部屋に配置する、テープライブラリから取り出したテープカートリッジを厳重に保管するなど、「物理的な」セキュリティも確立しなければならない。
さらに、データを長期間にわたり安全に保管するには、テープカートリッジの定期的なメンテナンスが欠かせない。第3回でも触れたように、テープからデータを確実に読み出せてこそのバックアップであり、アーカイブなのだ。
したがって、1年に1回くらいはテープに書かれたデータを確実に読み出せるかどうかを検証する必要がある。山崎氏によれば、最も手っ取り早い検証方法は、テープカートリッジを複製することだという。テープカートリッジを複製することで、読み出しの検証を行いつつ、同時に劣化の少ない新しいテープカートリッジへとデータを移行できる。
テープをどれくらい酷使するかにもよるが、主要なメディアベンダーの情報によれば、テープカートリッジの寿命はだいたい5年だといわれている。したがって、数年に1回くらいの割合でテープの複製を行えば安心感が大きく増す。同じ規格のテープメディア同士で複製するのが最も簡単だが、安全を期すならば新しい規格のテープメディアに複製するメディアコンバージョンが望ましい。テープドライブのテクノロジは急速に進化しており、テープメディアの寿命が尽きるよりも先にテープドライブが販売終了となってしまうケースが多いからだ。
実際、最新のSDLT 600ドライブは、従来のDLT 4000/7000/8000のテープメディア(DLT tape IV)に対するリード互換性を持たなくなった。このようなケースは、今後他のテープ規格でも見られると考えておいたほうがよい。
メディアコンバージョンの方法はいくつかある。最も手っ取り早いのは、ストレージベンダーが提供しているメディアコンバージョンサービスを利用する方法だ。StorageTekによれば、同社のメディアコンバージョンサービスでは、オープンリールから9840/9940テープカートリッジ、DLTからS-DLT、DLTからLTOに移行する事例が多く見受けられるという。
もう一つは、ストレージベンダーのパートナーが提供しているデータ複製ソリューションを利用する方法だ。通常は、テープライブラリを導入するタイミングに合わせるか、アフターサポート期間中のタイミングでデータ複製ソリューションを追加する形となる。セキュリティの関係などにより現場でメディアコンバージョンを行う必要があるユーザーは、こちらを選択すればよい。
StorageTekによれば、システムの運用から離れたオフライン環境下でメディアを複製するソリューションも開発中だという。これにより、オリジナルから複製されたテープをそのままオリジナルとして使えるようになる。従来のようにオンライン環境下でテープを複製すると、複製先のテープは「レプリカ」という位置づけになる。これをオリジナルのテープとして使用するには、何らかのアプリケーションでオリジナルと同じ位置付けに昇格しなければならない。「現在、パートナー側ではすでにオフラインでテープを複製するツールが完成しており、これを弊社のソリューションとして提供できるように話を進めているところです」(山崎氏)
本連載は今回で最終回となるが、ぜひこれらの記事を通じて安全かつ効率的なバックアップシステムを構築していただけたら幸いである。
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