インターネットVPNの導入で泣きを見ない2つのポイント

今や、専用線やフレームリレーといった技術に、インターネットVPN以上のメリットは見出すことはなかなか難しいかもしれない。しかし、インターネットVPNを採用するつもりなら、いくつか抑えておきたい点も存在する。大きく2つに分けて見ていこう。

» 2004年11月24日 10時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 今日の企業活動を支えるといっても過言ではないネットワーク部分は、増え続けるトランザクションに対応するだけの柔軟性を保ちつつ、コストを抑えることが求められている。この相反する命題に応えるものとして、ソニーではインターネットVPNサービス「bit-drive」を提供している。

 距離や速度によって利用料金が決められる専用線などに比べ、ベストエフォートとはいえ、それらを大きく上回る速度を低コストで実現するインターネットVPN。インターネットVPNの最新事情については、すでにこちらで述べたので、ここでは、bit-driveを導入した企業のうち、トータルSIやVPNの冗長化を採択した企業の例を挙げながら、bit-driveの強みを見てみよう。

LAN側の運用まで目を向ける「トータルSI」

 2004年11月、ソニーのグループ企業であるソニーマーケティングは、大阪の梅田にある複合商業施設「ハービス エント」の4階に「ソニースタイル ストア」をオープンした。それまでは心斎橋のソニータワーにショールームを開設しており、通信には専用線と広域イーサネットを利用していたが、今回のオープンにあたっては、bit-driveのサービスを採用している。

 ネットワークの利用目的は、ストア内にある展示端末のインターネットアクセスが主たるもので、ストアの趣旨に合った通信だけを許可するような設計となっている。

NW図 ソニースタイル ストアのネットワーク構成図(クリックで拡大します)

 企業によっては、ネットワーク周りに詳しい人間が配置されていないこともあり、LAN側の運用管理まで保守をお願いしたいという声は多い。ソニースタイル ストアの事例も、同様の悩みを抱えていたという。しかし、bit-driveのレンタルメニューではルータまでの設計となっており、LAN側の運用は企業が行う必要があった。

 ここで、bit-driveでは、SIerと協力することで、LAN側にまで踏み込んだシステム構築を行った。「お客様が希望されるなら、ベンダーやSIerと協力し、LAN側のスイッチまでの設計と、それらを含めた運用保守のサポートの一元化を提供できる」と話すのはソニー PSBGネットワークサービスセンター 通信サービス事業部 営業部の工藤孝之氏。加えて、「導入における回線手配から運用管理までをワンストップで行えること。また、運用面でも、24時間365日のリモート監視体制による安心感は見逃せない」と、bit-drive選択のポイントを営業技術グループの平山智史氏は語る。

 もちろん、SIerなどと協力する場合も、設計はインターネットVPNの構築ノウハウを多く持つbit-driveが行う。また、運用保守に関しても、問い合わせ窓口はbit-driveに一元化されているのはユーザーにとって分かりやすい。

 ユーザーからするとあまり意識しないかもしれないが、このことは大きな意味がある。レンタルメニューのほうが低いコストになることが多いので現実的ではないかもしれないが、例えば、すでにあるルータなどの資産を活かした形でインターネットVPNを構築したいという声に対しても、そのルータに関するノウハウを持つSIerと協力することで対応可能になるのである。

 保守レベルは高いままで、サービス内容も維持したい、しかもリプレイスは短期間で、と思う企業のシステム担当者は多いはずだ。ソニースタイル ストアの例では、1カ月ほどの期間で設計から構築までを行っている。以前のシステムを構築していたベンダーなどとの話し合いもあるので、これはかなりの短期間で構築されたことになる。また、コストについては、保守費用も含めて従来の半分程度にまで削減されている。

冗長化構成で柔軟なネットワーク

「拠点数の多い流通業や製造業などではインターネットVPNを検討されるケースが多い」と話す工藤氏だが、そうした企業が抱える悩みというのは似通っている部分が多いと続ける。インターネットVPNを導入する企業が抱える共通の悩みとしては、既存の通信環境からの乗り換えによるコストメリット、それにともなう通信速度向上への期待、また、充実した保守サポートの面であるという。

 そのほかに、専用線やフレームリレーを利用していたユーザーがもっとも気にする事項を一つ挙げるなら、それはセキュリティの問題だろう。これまでそれらの回線を利用してきたユーザーの中には、いまだにインターネットVPNに対する不信感を持つ人間も多い。ITの活用によるビジネス改革が叫ばれる中、競争力を持つ企業体制への改革は急務であり、スピードのある組織体を構成し、ビジネスチャンスを逃さない体制を構築しようという意志はある、しかし、コストが下がるからといって品質で劣るものを使うわけにはいかないというのが彼らの声だ。

 そうした部分の見極めがしやすいよう、ソニーでも提案段階からさまざまな提案を行っている。例えば、インターネットVPNと広域イーサネットやIP-VPNの併用、回線や機器の冗長化/3重化、負荷分散構成といったものである。セキュリティポリシーなど、ソフト寄りなものとは異なり、入れた後での変更が簡単にはできないため、場合によっては、実際に検証期間などを設けることもあるという。

構築事例:回線の冗長化とDigitalGateを利用したリモートアクセスを提供している(クリックで拡大します)

 上図を見ると、冗長化のほかにも、DigitalGateを利用したリモートアクセスや、セキュアアクセスサービスCRYPなど、ソニーが提供する多くの製品・ソリューションを組み合わせている。他社では実現できないソリューションとなっていることが分かる。

 インターネットVPNの導入にあたっては、ユーザーとの認識のズレをなくすことが必要だといえる。こうしたズレはサービスレベルや保守の面などさまざまな所で顔を出すやっかいなものだが、それを最終的に解決できるのはやはり技術者だといえる。「豊富なノウハウを持つ技術者も多く、導入時の実践的構築力、そして、障害への対応力といったヒューマンスキルが強み」と話す工藤氏、実績に裏付けられた確信が、ソニーのアイデンティティにほかならない。

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