オープンな環境で行われたUHF帯のRFID実験SFC OPEN RESEARCH FORUM 2004レポート

「SFC Open Research Forum 2004」で、Auto-IDラボ・ジャパンは、950MHzのUHF帯のICタグを利用して、EPC Networkを応用したイベント運営支援システムの実験運用を行った。

» 2004年11月26日 09時14分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 慶應義塾大学藤沢キャンパスの研究発表会「SFC Open Research Forum 2004」(ORF2004)が11月23、24日に開催され、Auto-IDラボ・ジャパンが、950MHzのUHF帯のICタグを利用して、EPC Networkを応用したイベント運営支援システムの実験運用を行った。Auto-IDラボ・ジャパン所長で、慶応義塾大学環境情報学部教授の村井純氏は、「閉じた空間以外でUHF帯の実験が行われることは非常に珍しい」と話している。

RFIDの取り組みを説明するAuto-IDラボ・ジャパン所長の村井純氏

 UHF帯は、RFIDシステムにおける通信電波の標準仕様として欧米で導入が進んでいる。総務省はこれに対応し、総務省情報通信審議会の情報通信技術分科会の省電力無線システム委員会において、2005年度には電波法を改正し、UHF帯周波数をICタグ利用向けに割り当てることを検討中だ。UHF帯の特徴は、電波の回り込みが大きいこと、低出力で通信距離が比較的長い、水分による影響が少ないことなど。経済産業省は、2004年3月から、家電、アパレル、出版、商品流通の分野で実験許可を取り、UHF帯での実証実験を開始した。

 ORF2004では5000人規模の来場者に、13.56MHzのHF帯と、950MHzのUHF帯の2種類のICタグが配布された。会場には、出展者ブースやセミナー会場にHF帯リーダが設置される一方、会場内の導線に沿ったCafe内にはUHF帯リーダが置かれ、ブースの来訪者を可視化するアプリケーション「ORF Activity Store」が提供されている。(関連記事)来場者の行動履歴が会場内のスクリーン上に表示されることで、注目を集めているブースなどがリアルタイムに理解することができる。企業などが今後、何らかのイベントの運営などで応用することが期待される。

来場者に配られたICタグ。左はUHF帯、右はHF帯。

EPC Networkを応用したイベント運営支援

 イベントでは、HF帯タグとEPC Network(関連記事)を利用したイベント運営支援が行われた。具体的なサービスのひとつが「名刺レスサービス」だ。各出展ブースに設置されたリーダは、来場者に配ったHF帯のICタグを読み取り、個別に割り振られたIDであるEPCを認識する。その情報は、会場のEPC Network上に構築されたブース来訪記録システムに保存される。イベント運営者は、記録を集計し、その情報を出展者に渡すことで、ブースに来場した人の情報を取得することができる。後日、来場者に個別にアクセスするといった取り組みを行うことができるわけだ。紙の名刺を渡す必要がない点で、名刺レスサービスとなっている。

 ただし、ここでは、ICタグで個人情報を読み取ることになるため、プライバシー問題には注意を払う必要がある。ORF2004でも、リーダの設置場所を意味するシンボルマークが設置されたことをはじめ、来場者向けに説明書が配布されたり、サインボードも設置された。また、ブースを来訪した履歴を残したくない人のために、記録を消去する端末も設置されている。

 プライバシー問題に関して、経済産業省と総務省は、2004年6月8日にガイドラインを示した。一例を挙げると、ICタグを利用する際にICタグが装着してあることの表示、ICタグ読み取りに関する消費者の最終的な選択権の留保、個人情報データベースとICタグの情報を連携する場合の個人情報保護法の適用、個人情報をICタグに記録した場合の当該情報の規定などが定められている。

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