IT業界に根付く神戸情報大学院大のオープンソースカリキュラムとは

「オープンソースは、現代のIT業界で活躍するために1から10までを学ぶに相応しい教材」と福岡氏。注目する背景と業界の一線で通用するためのポイントを語った。同氏はOpen Source Realize Forum 2005で講演を行う。

» 2005年03月03日 10時51分 公開
[木田佳克,ITmedia]

 「高度IT技術者の育成」。2005年4月にスタートする神戸情報大学院大学の特色は、IT業界で第一線の技術者達が教育に携わることにある。同大学院(専門職大学院)は、2003年に施行された改定学校教育法で認められた新たな形態の1校であり、専門職修士が付与される。そして、オープンソースソフトウェア(OSS)に取り組むことが特徴であり、今後IT業界でOSSを生かした基幹構築ビジネスを左右するに相応しい人材輩出が期待されるところだ。

 4月にスタートであるものの、これまでの歴史は長い。関連する学校法人コンピュータ総合学園の専修学校、神戸電子専門学校は1958年に開校。同学園では文部科学省の教材開発を数多く手がけている。この点が神戸情報大学院大学の特色の1つとなった。また、Linuxが業界で注目される以前の1995年、神戸電子専門学校では学内500台規模のクライアント環境にLinuxをIPソフトウェアルータとして構築導入。その維持、保守管理ノウハウなどをいちはやく授業に取り入れたという。

 なぜ、いまオープンソースに関わる人材育成に注目し、神戸情報大学院大学の特色とするに至ったのか。神戸情報大学院大学の開発準備室長、福岡壯治氏に聞いた。同氏は、神戸電子専門学校の副校長も担っている。なお、3月15日(神戸)と18日(東京)に開催する「Open Source Realize Forum 2005」では、15日の会場が神戸電子専門学校となっている。

福岡壯治氏は、IT教育の現状分析とオープンソースソフトウェアを教材にする意義を語った

IT業界で求められる人材育成の特化が重要

 「新たな技術を研究開発をするのではなく、IT産業界で求められる技術を研究して生かすことが目的」と福岡氏は強調する。

 背景には、そもそも大学が学問追求を主目的としていることにあり、人材育成や教育に必ずしも主軸を置いていない点にあるという。国内では特にこの傾向が顕著であり、産業界が求める専門職業人の育成をカリキュラムの主軸におき、実践出来ているところは2割も無いのではと分析している。しかし、現代でITを志す学生は、SIベンダーなどへの就職を目指すことが多いため、ある種のギャップが生じている。このような点に着目するとともに、業務アプリケーション開発の人材育成に軸足を置いたカリキュラムは、現状、他校で皆無という状況との分析をする福岡氏。これらのニーズを満たすものは専門学校へと集中、依存度が高い、と最近の傾向についてを語る。

 そうとはいえ、IT業界で活躍するに相応しい教育追求に関し、今後は大学なのか? 専門学校なのか? と論議されている分野なのも事実。これほどの特化をすべき背景には、見本となる米国事情があり、前述したような区分けは既に出来上がっているという。国内で充実すべきは、米国でのコミュニティカレッジなど、産業界と結びついた単科大学では、と福岡氏は語る。

よりIT業界が欲する人材像に近づける教育とは

 神戸電子専門学校では、修業が2年から3、4年という期間になるが、今年度の志願者傾向からも、早期の内にはJavaやPHPだけに取り組みたいといった考えを持つケースは希だという。ほとんどは、Webアプリケーションやケータイコンテンツを作りたいといったサービス指向の志望が多い、と福岡氏。既に歴史のある神戸専門学校の傾向からも、在学者は修業中に興味がある分野が見つかれば、探求していくという思考がほとんどだという。これはまさに、IT業界に就職することを望む傾向の表れという。

 現代のIT業界が欲している人材像は、後述する経済産業省が定めるスキルフレームワーク当てはめるならば、レベル3や4以上。ITスペシャリストに留まらずマネージメントやアーキテクトという人材像もニーズが高い。このため、漠然とコンピュータ好きだからというキッカケで入学したとしても、先々はこれらのスキルフレームワークを意識して学ぶべき背景がある。神戸情報大学院大学ではこの点を強く意識した。

 「専門学校では、付き合いのある産業界によってカリキュラム傾向が決まってしまう」と福岡氏。修業可能な領域が比較的限られることを意味し、オープンソースであればソフトウェアの基礎から応用、そしてハードウェア制御へと通ずるLinuxカーネルハッキングなどと、深く追求することもできる格好の教材、と同氏は強調する。

 カリキュラムは、設計されているという。数多くの履修モデルを想定しており(レベル5から8には非対応)、主にプロジェクトマネージャ、ソフトウェアデベロップメント、ネットワーク技術者などのITスペシャリスト、ネットワーク技術者と大別するものの、それぞれはスキルフレームワークの細分化を見据えた教育となっていると語る。

 「国もこのように整備を行ったため、産業界と共通の物差しで人材育成を話せるようになった」と福岡氏。

 いまや、IT業界で活躍する人材は、「情報をトータルで扱う、世の中の仕組みを造り上げること」との意見がある。そのような志を満たすためには、前述のようにオープンソースこそが1から10まで知るために相応しい存在であり、商用ソフトウェアでは探求することができないものだと、福岡氏からのOSSへの想いが印象的だった。

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