Novell社内のLinuxデスクトップへの移行がなぜ画期的なのか

Novellは自社のWindowsデスクトップをすべてLinuxに切り替えようとしているが、これはLinuxデスクトップの将来を考えるに当たって非常にインパクトのある話である。

» 2005年03月28日 15時18分 公開
[Joe-Barr,japan.linux.com]

 ソルトレイク・シティー――Brainshare 2005カンファレンスを巡るさまざまなアナウンスや慌ただしい動きに紛れて重要な話が見落とされてるような気がする。月曜に行われたNovell社のCEO、ジャック・メスマン氏の基調講演の中で、その話はさりげなく語られた。Microsoftの長年のパートナーであるNovellが自社の6000台のWindowsデスクトップをすべてLinuxに切り替えようとしているのだ。

 この移行作業について教えてくれそうな重役に取材を申し込んだところ、CIO(最高情報責任者)のデブラ・アンダーソン氏が忙しい中、貴重な時間を割いて途方もない話をしてくれた。

 移行作業が始まったのは去年の夏だ。実のところ、去年から始まったのは第一段階で、Microsoft OfficeからOpenOffice.org(OOo)に移行することがテーマだった。この第一段階についてアンダーソン氏は大胆な目標を設定した。90%のMS Officeユーザーを3カ月でOOoに移行しようと考えたのである。この目標はほぼ達成され、この期間に85%の移行が完了した。また、移行できない人々から得た知見がOOo開発者にフィードバックされ、より困難な障害を取り除くための取り組みが始まった(注:未確認情報だが、その後、NovellはOOo開発者を何人か雇用したらしい)。

移行作業の本体は昨年開始された

 Linuxへの移行作業の本体は昨年の夏に開始された。Novellの社員の中から120人の有志が名乗りを上げた。NovellのLinux Desktopがリリースされる以前の話である。ここでもアンダーソン氏は大胆な目標を設定した。10月までに50%のNovell社員をLinuxデスクトップに移行しようと考えたのである。この目標は達成され、50%の社員全員が自発的に移行した。

 アンダーソン氏は次のように指摘する。この移行について会社は確信を持っていた。ここで会社とは経営陣だけでなく、Novellの一般社員も指す。それは多数の有志が名乗りを上げたことによく現れている。この確信があったからこそCIOとしての彼女の仕事は円滑に運んだのである。ほかの会社のCIOだったらこうはいかなかっただろう。

 Novellの会計年度は11月より始まる。現会計年度のデスクトップ移行目標は前年度と変わらず、年度末までに80%を移行するという。なぜ100%でないのか。これまでの移行作業から得られた知見が効いているからだ。つまり、現在Windowsデスクトップで実現されているすべての機能を直ちにLinuxで実現できるわけではないからだ。しかし、相当部分の移行が既に完了しており、その結果、昨年度はMS OfficeとMS Windowsのライセンス使用料が90万ドル節減された。この節減は今年度以降も毎年生じるものである。

 現在、Novell社が新たに導入するデスクトップはLinuxデスクトップとなっている。Windowsデスクトップに関するMicrosoftとの契約は破棄された。繰り返しになるが、これはOOoへの移行に関する話であって、それ以外の厄介な問題については、解決に向けて開発者へのフィードバックが行われている。

短いトレーニング期間

 Linuxへの移行で必ず議論となるのはトレーニングの問題である。Windowsユーザーを生産的なLinuxユーザーに変貌させるのに何日かかったかアンダーソン氏に訊いてみた。それは何日ではなく何時間の話だと彼女は私の質問を訂正した。

 トレーニングの重点は使い方の違いを教えることに置かれている。LinuxカーネルとWindows XPの違いを理解する必要はない。Novellの移行トレーニングではウィンドウを開いたり閉じたりすることや、アプリケーションの開始・終了、ログインとログアウトの方法などを教えるという。

 無論、その他のサポートも適宜提供される。インターネット上にリファレンス・カードが用意されており、ユーザーはMS Officeで行っていた作業をOOoでどう行えばよいか知ることができる。Novellのイントラネットに「The Open Zone」と呼ばれるエリアが設けられており、そこで社員の疑問に答えるための追加的な情報やFAQが提供される。アンダーソン氏曰く、「The Open Zone」はNovellで2番目に人気のあるエリアだという。

 これがBrainshare 2005の重要な話と考えるのは、移行の影響がNovell社内のデスクトップにとどまらず、それをはるかに越えたところまで及ぶと思うからだ。今後、具体的な作業の流れが明かされ、移行の障害も取り除かれるだろう。作業が一段落した暁には道が切り開かれ、他の大企業がその後を追うことになるはずだ。

 アンダーソン氏は、移行についてのアナウンスがあることをNovell社内の作業が完了する前に教えてくれた2人目の重役だ。それ以上のことを語るのは無理なのだろうが、とどのつまり2005年はLinuxデスクトップが米国産業界に地歩を固める年となるように思われる。

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